マネー・ドール -人生の午後-
「もう少ししたら、パパが迎えにいらっしゃるから」
「パパ、ここに来るの? ねえ、ちゃんとパパに話してくれるでしょ?」
「そうね、話してみる」
 不安な顔。不安な目。
 そうだよね……母親が三日も家を空けたら、不安だよね……私はそんなこと、日常だったけど……

「ご飯とか、どうしてるの? ママがいないと、たいへんでしょ?」
「パパが作ってくれたり、お弁当買ったりしてるよ」
「パパ、夜勤とかあるんじゃないの? その時はどうしてるの?」
「三人でいるの」
「子供だけで?」
「うん。お兄ちゃんがいるから、大丈夫だよ」
「でも、やっぱり子供だけでいるなんて、危険よ」
「だって、ママがいないから……」
 子供だけで夜を過ごすなんて、寂しいに決まってるじゃない! 将吾、あなたもそれ、わかってるでしょ? 聡子さんも、いくらケンカしたからって、子供をほったらかしにするなんて……
 無性にイライラしてきた。将吾が来たら一言いってやらないと、気が済まない! 

 将吾が来るまで、私と凛ちゃんは、いろんな話をした。
学校の話、流行の話、お友達の話、家族の話。
楽しそうに、凛ちゃんは、私に話してくれた。私にはなかった子供時代の思い出を、なんだかもらった気がする。
 子供って、こんなに可愛いんだ。私も……やっぱり、赤ちゃん、欲しいな。

「インターホン、鳴ったね。パパが来たのかな?」

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