マネー・ドール -人生の午後-
バーベキューが始まって、慶太も中村くんも、ぐいぐいビールを飲んで、子供たちはお肉を頬張って、加奈さんと聡子さんはお喋りに夢中で。
私はなんとなく、居場所がなくて、一人ぼんやり、流れる川を眺めながら、木陰に座っていた。
「真純」
顔を上げると、ビールを持った将吾が立っていて、私にも、ビールを差し出した。
「ありがとう」
将吾は、少し離れて、隣に座って、タバコに火をつけた。そのタバコは、二十年前と同じ、タバコだった。
「いい、奥さんね」
「そうやなあ」
将吾は、眩しそうに川の水面に、目を細めた。
「キレイやな」
それは、川? それとも……
「広島、帰ってんのか?」
「ううん、一度も」
「おばさん、寂しそうやった」
「あの人に、会ったの?」
「去年、オヤジが死んでな。葬式に帰った」
「そうだったんだ……知らなくて……」
「俺も、あんまり、広島にいい思い出はないから」
それ以上、私達は、お互い何も、言わなかった。言いたくなかった。
そして、私達は、散々な子供時代の記憶に、そっと、唇を噛みしめる。
殴られ、ゴミ箱をあさって、寒さに耐えて……万引き、ひったくり、置き引き、カツアゲ……将吾は私を助けるために、なんでもしてくれた。
挙句に、私のために、前科まで……
私はなんとなく、居場所がなくて、一人ぼんやり、流れる川を眺めながら、木陰に座っていた。
「真純」
顔を上げると、ビールを持った将吾が立っていて、私にも、ビールを差し出した。
「ありがとう」
将吾は、少し離れて、隣に座って、タバコに火をつけた。そのタバコは、二十年前と同じ、タバコだった。
「いい、奥さんね」
「そうやなあ」
将吾は、眩しそうに川の水面に、目を細めた。
「キレイやな」
それは、川? それとも……
「広島、帰ってんのか?」
「ううん、一度も」
「おばさん、寂しそうやった」
「あの人に、会ったの?」
「去年、オヤジが死んでな。葬式に帰った」
「そうだったんだ……知らなくて……」
「俺も、あんまり、広島にいい思い出はないから」
それ以上、私達は、お互い何も、言わなかった。言いたくなかった。
そして、私達は、散々な子供時代の記憶に、そっと、唇を噛みしめる。
殴られ、ゴミ箱をあさって、寒さに耐えて……万引き、ひったくり、置き引き、カツアゲ……将吾は私を助けるために、なんでもしてくれた。
挙句に、私のために、前科まで……