マネー・ドール -人生の午後-
試験は来週の日曜日に迫ってて、山内くんは、もう大丈夫って言うけど、やっぱり不安。苦手なとこ、やっとかないと。
あー、わかんない。これ、ほんとに苦手。
「何悩んでんの?」
「ああ、もうあがったの?」
「うん。わかんないとこあるの?」
「ここが、苦手なの。何回も教えてもらったのに……」
「どれどれ。ああ、これはね、もっと単純に考えるんだよ」
慶太のやり方で解くと……あれ? すっごい簡単!
「山内くんと違う」
「教え方が下手なんだよ、あいつは。真面目に考えすぎ。試験なんてものは、コツなんだよ。コツさえつかめば、知識なんかなくても受かるんだよ」
「そうなの?」
「そ、俺はそうやって、今に至る。ちなみに、次の問題は……こうやるんだよ」
へえ、慶太って、ほんとに……できるんだ、簿記。薄々、疑ってたりして。
「簡単!」
「やっぱり俺が最初から教えればよかったなぁ」
「すごーい、慶太、ほんとに会計士なんだね!」
「おいおい、知らなかったの?」
「ちょっと……疑ってた」
「酷いなあ。これでも結構優秀なんだよ?」
「うん、初めて信じた」
「なんだよ! あ、そうだ、ねえ、聞きたいんだけどさ」
「何?」
「この前さ、山内が合格したらとかいう話でさ……なんて言ったの? なんか、コソコソしてたじゃん」
「ああ、あれ? 言っていいのかなあ」
「俺に聞かれたらマズイようなことか!」
「もう、怒んないで。内緒だよ。今度ね、一緒にカフェに行って、ケーキ食べて、お兄ちゃんって呼んで欲しいって」
「は? プレイかよ!」
「プレイとか言わないの」
「あいつ、ほんとは変態なんじゃないか?」
「純粋に、妹さんが可愛かったのよ」
「妹って、何で死んだの?」
「事故らしいけど、詳しくは……ご両親も亡くなられたみたい。小学校の時だったとか」
「え? あいつ、事務所に来た頃、親の葬式だとかなんとか言って休んでたような気がするなあ。ずる休みか!」
「親戚のお宅に養子に出されたんだって」
「ああ、そういうことか」
「ねえ、私って妹キャラなのかしら」
「確かに、そうかも! なあ、俺のことも、お兄ちゃんって呼んでみてよ」
「ええ? なんで?」
「いいから、呼んでみて。お兄ちゃんって」
なんか、キモ……ニタニタしちゃって。仕方ないなあ。
「お兄ちゃん」
「真純、なんだよ。なんでもお兄ちゃんに言ってみなよ」
これこそ、プレイじゃん!
「お風呂入って来るね」
「お兄ちゃんが洗ってあげようか? そのおっぱいとか、おしりとか……」
なにこれ。マジできもい。鼻の下のばしちゃって、何が嬉しいのか……
「自分で洗えるからいい」
付き合ってられないわ。ほんとにもう、バッカみたい。変態はあなたでしょ。さっきと同じ人とは思えないけど……
そういうところが、好きなのかも。
お風呂からあがると、慶太がソファで居眠りしてる。ビールの缶が三本ほど空いてて、飲みすぎじゃないの?
「慶太、こんなとこで寝たら風邪ひくよ」
「うーん、真純……お兄ちゃんはな……」
まだ言ってる。
「私の部屋で寝るの?」
「うん……」
なんとか慶太を私のベッドに寝かせて、私は寝室へ。娘ちゃん達はよく眠ってて、私は端っこに入った。
「おやすみなさい……」
小声で囁くと、隣の碧ちゃんが、私に抱きついて、ママって、寝言を言った。
寂しいんだ……寂しいよね……不安だよね……
でも、もしかしたら、私が本当に、奪ってしまっていたかもしれない……この子たちから、大切なママを……
ごめんなさい。おばさん、できる限りのこと、するからね……
あー、わかんない。これ、ほんとに苦手。
「何悩んでんの?」
「ああ、もうあがったの?」
「うん。わかんないとこあるの?」
「ここが、苦手なの。何回も教えてもらったのに……」
「どれどれ。ああ、これはね、もっと単純に考えるんだよ」
慶太のやり方で解くと……あれ? すっごい簡単!
「山内くんと違う」
「教え方が下手なんだよ、あいつは。真面目に考えすぎ。試験なんてものは、コツなんだよ。コツさえつかめば、知識なんかなくても受かるんだよ」
「そうなの?」
「そ、俺はそうやって、今に至る。ちなみに、次の問題は……こうやるんだよ」
へえ、慶太って、ほんとに……できるんだ、簿記。薄々、疑ってたりして。
「簡単!」
「やっぱり俺が最初から教えればよかったなぁ」
「すごーい、慶太、ほんとに会計士なんだね!」
「おいおい、知らなかったの?」
「ちょっと……疑ってた」
「酷いなあ。これでも結構優秀なんだよ?」
「うん、初めて信じた」
「なんだよ! あ、そうだ、ねえ、聞きたいんだけどさ」
「何?」
「この前さ、山内が合格したらとかいう話でさ……なんて言ったの? なんか、コソコソしてたじゃん」
「ああ、あれ? 言っていいのかなあ」
「俺に聞かれたらマズイようなことか!」
「もう、怒んないで。内緒だよ。今度ね、一緒にカフェに行って、ケーキ食べて、お兄ちゃんって呼んで欲しいって」
「は? プレイかよ!」
「プレイとか言わないの」
「あいつ、ほんとは変態なんじゃないか?」
「純粋に、妹さんが可愛かったのよ」
「妹って、何で死んだの?」
「事故らしいけど、詳しくは……ご両親も亡くなられたみたい。小学校の時だったとか」
「え? あいつ、事務所に来た頃、親の葬式だとかなんとか言って休んでたような気がするなあ。ずる休みか!」
「親戚のお宅に養子に出されたんだって」
「ああ、そういうことか」
「ねえ、私って妹キャラなのかしら」
「確かに、そうかも! なあ、俺のことも、お兄ちゃんって呼んでみてよ」
「ええ? なんで?」
「いいから、呼んでみて。お兄ちゃんって」
なんか、キモ……ニタニタしちゃって。仕方ないなあ。
「お兄ちゃん」
「真純、なんだよ。なんでもお兄ちゃんに言ってみなよ」
これこそ、プレイじゃん!
「お風呂入って来るね」
「お兄ちゃんが洗ってあげようか? そのおっぱいとか、おしりとか……」
なにこれ。マジできもい。鼻の下のばしちゃって、何が嬉しいのか……
「自分で洗えるからいい」
付き合ってられないわ。ほんとにもう、バッカみたい。変態はあなたでしょ。さっきと同じ人とは思えないけど……
そういうところが、好きなのかも。
お風呂からあがると、慶太がソファで居眠りしてる。ビールの缶が三本ほど空いてて、飲みすぎじゃないの?
「慶太、こんなとこで寝たら風邪ひくよ」
「うーん、真純……お兄ちゃんはな……」
まだ言ってる。
「私の部屋で寝るの?」
「うん……」
なんとか慶太を私のベッドに寝かせて、私は寝室へ。娘ちゃん達はよく眠ってて、私は端っこに入った。
「おやすみなさい……」
小声で囁くと、隣の碧ちゃんが、私に抱きついて、ママって、寝言を言った。
寂しいんだ……寂しいよね……不安だよね……
でも、もしかしたら、私が本当に、奪ってしまっていたかもしれない……この子たちから、大切なママを……
ごめんなさい。おばさん、できる限りのこと、するからね……