マネー・ドール -人生の午後-
 将吾のマンションにつくと、五時半になってた。もうあたりは真っ暗で、不安にさせちゃったかな……
「ここからどうやって帰るんですか?」
「まあ、電車か何かで……」
「それなら、お送りしますよ」
「ああ、助かるわ。お友達のお嬢さんをあずかってるの。その子たちを連れて帰るんだけど、いい?」
「もちろんです」

 結局、今日はなんだか疲れちゃったし、四人で途中で見つけたファミレスで夕食を済ませることに。
娘ちゃん二人は、慶太とはタイプの違う、モデル系イケメン田山くんに大喜びで、田山くんも、なんだか嬉しそう。へえ、意外に、子供好きなんだ!

 四人でご飯を食べてると、カメラを持った人が、私たちのテーブルに。
「お食事中、申し訳ありません。タウン誌の取材なんですが、『素敵なファミリー』っていう特集をするんです。もしよろしければ、取材、させていただけませんか? とても素敵なご家族なので」
 ええっ! 家族じゃないし! でも、この田山くんと夫婦に見えてるってこと? それに、私、ママに見えてるってこと? にやけちゃうんじゃん!
「ごめんなさい。私たち、家族じゃないんです。この子たちはお友達のお嬢さんで……彼も……お友達なんです」
「ああ、そうなんですか。それは失礼しました。でも、とてもお似合いですね。本当のご家族のようですよ。では、失礼します」
 やだあ。田山くんとお似合いだなんて……五つも年下なのに!
「なんか、ごめんね。私とお似合いだなんて、ねえ」
「いえ、嬉しいです。夫婦に間違われるなんて、光栄ですよ」
 クールに微笑む田山くんに、二人は顔を見合わせて……
「ねえ、たやまくんは、おばさんのこと、好きなの?」
「ちょっと、凛ちゃん! そんなこと……」
「あはは、子供はごまかせないなあ。たやまくんね、おばさんに憧れてるんだ。ファンってことかな」
「ファンだって!」
「そう、ファンなんだ。でも、慶太おじさんには、内緒だよ」
 田山くんはそう笑ったけど……今でも、私のこと……想ってくれてるのかな……

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