マネー・ドール -人生の午後-

(2)

 その夜は、みんなでコテージにおとまり。
 やっぱり、聡子さんに謝りたくて、杉本家の部屋へ行ったけど、出てきたのは、将吾だった。

「あの……聡子さんは?」
「コンビニに行っとるよ。三十分は帰って来んかなあ」
三十分……どうしよう……
「聡子になんか、用事か?」
「うん……ちょっと……」
「まあ、待っとけよ」
 将吾は、私に中に入れって、ドアを開けた。
迷ったけど、中に入った。聡子さんを待つために、中に入った。

 将吾は、昔ほどじゃないけど、やっぱり引き締まったカラダで、優しい感じにはなってるけど、どこか、不良っぽい感じで、慶太とは違う、男くささっていうか……フェロモンっていうか……
私は、Tシャツの袖から覗く、逞しい二の腕をぼんやり見ていて、その腕に抱かれていた、遥か昔のことを、思い出していた。

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