マネー・ドール -人生の午後-
(5)
今日は、随分、暖かい。
三月なのに、陽射しが少し強くて、風はまだ少し冷たいけど、俺はマフラーを外して、ベンチに座っていた。遠いあの日、杉本が座っていたベンチに、俺は座っている。……あいつを待っている。
目の前で、ちびっこ達が遊んでいて、その周りには、若いお母さん達が、おしゃべりしている。
もしかしたら、真純もあんな風に、おしゃべりしていたかもしれない。
もう、戻れないって、わかっているけど、やっぱり俺は、真純を幸せにできなかったことを、普通の幸せを与えてやれなかったことを、後悔している。
なのに、俺はこんな決断しかできない。それなら最初から、真純を離しておけばよかった。でも、離せなかった。杉本のように、俺は、真純を一人にすることが、できなかった。ずっと、二十三年間、ずっと。
真純は、一人では生きられない。誰かに愛され、誰かに支えられていないと、真純は、生きられない女だ。一人になれば、きっと真純は消えてしまう。
だから、俺も杉本も、真純を、離せなかった。
三月なのに、陽射しが少し強くて、風はまだ少し冷たいけど、俺はマフラーを外して、ベンチに座っていた。遠いあの日、杉本が座っていたベンチに、俺は座っている。……あいつを待っている。
目の前で、ちびっこ達が遊んでいて、その周りには、若いお母さん達が、おしゃべりしている。
もしかしたら、真純もあんな風に、おしゃべりしていたかもしれない。
もう、戻れないって、わかっているけど、やっぱり俺は、真純を幸せにできなかったことを、普通の幸せを与えてやれなかったことを、後悔している。
なのに、俺はこんな決断しかできない。それなら最初から、真純を離しておけばよかった。でも、離せなかった。杉本のように、俺は、真純を一人にすることが、できなかった。ずっと、二十三年間、ずっと。
真純は、一人では生きられない。誰かに愛され、誰かに支えられていないと、真純は、生きられない女だ。一人になれば、きっと真純は消えてしまう。
だから、俺も杉本も、真純を、離せなかった。