マネー・ドール -人生の午後-
「愛してるの、慶太のこと」
「うん」
「でも、わかんなくなるの」
「何が?」
わかんない。何がわかんなくなるのか、わかんない。
私……私が、わかんないの……
「俺のこと、信じられない?」
「そうじゃないの……私が、いけないの……」
「杉本のこと、後悔してるの?」
「後悔は、してないけど……将吾、私のこと、とっても大切にしてくれたのに、私……ひどいことをしてしまって……」
 後悔とか、未練とか、そんなんじゃない……
こんな私を、受け止めてくれるのは、将吾しかいない気がするの……
「……甘え、られないの……」
「俺に?」
「うん」
「どうして?」
「わかんない……」
 慶太は、私のおでこに、彼のおでこをくっつけた。
「じゃあ、俺も、甘えていい?」
慶太も……同じ?
「カッコつけるの、疲れちゃった」
慶太は微笑んで、私を抱きしめた。
「ダサい俺のこと、嫌いにならない?」
「うん」
「杉本のことさ、好きでもいいからさ」
「私が、他の人のこと、好きでもいいの?」
「ダサいけど、それでもいいんだ、俺。それでも、お前にいて欲しいんだ」
慶太……そんなに、私のこと……
「慶太、私……」
さっきのこと、言うか迷ったけど、もう、きっと、わかってるよね……
「ごめんなさい」
「俺が悪かったんだ。俺、ダメなヤツだからさ。ずっと、お前を傷つけてきた。だから、杉本みたいに、まっすぐお前のこと、愛してた男に気持ちが戻るのも、仕方ない」
そんなんじゃないの……悪いのは私なの……
「すぐにとは言わないから、俺のこと、信じてくれ。俺、もう絶対、真純が悲しむようなこと、しないからさ」

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