マネー・ドール -人生の午後-
胸が、痛い。心臓が、締め付けられる。息が、苦しい。
どうして、こんな私に、みんな優しくしてくれるの?
こんな、ワガママで、バカな私なのに……
私なんて、誰からも愛される資格のない、人間なのに……
「俺さ、ずっと、杉本からお前を奪ったこと、重荷に感じてた」
そう……だったんだ……
「杉本に、言われたんだ。真純のこと、大切にしてくれって。俺の代わりに、守ってやってくれって」
将吾が? そんなことを?
「なのに、俺は、約束を守れなかった。お前のこと、傷つけてばっかりで……あの夜のこと……本当に悪かった」
あの夜……乱暴に、した夜のことよね……
「もう、そんなの、いいの」
正直に言うと、私は、あの時、そんなに傷つかなかった。
それどころか、ちょっと嬉しかった。初めて、あんなに、慶太が私に気持ちをぶつけてくれて、嬉しかった。
でも、あの頃の私は、素直になれなくて、寝室を出て、鍵をかけた。傷ついたのは、きっと、慶太のほう。
「将吾のとこ、行ったのね……」
「ああ。お前が出て行って、もう、ダメだなって、俺にはもう、無理だって、謝りに行ったんだ……でも、言えなかった。杉本は、お前とよく似た女と、一緒になってて……兄妹だとか、言って……」
知ってたんだ……慶太も、そのこと……
「もっと早く、話せればよかったな」
言葉が足りないのは、私だね。
言って欲しいことを、言えばいいんだよね。
言いもしないで、受けとめてくれない、なんて……勝手よね、私。
ねえ、慶太。私ね、本当はね……あなたに、甘えたいの。
甘えてもいい? 私、キャリアウーマンでも、なんでもないの。
本当はただの、普通の、アラフォーのおばさんなの。
普通の……『女』なの……
「慶太にね……もっと、甘えたいの」
「甘えてくれよ、思う存分」
「慶太、私ね……もう、会社……疲れたの」
「そうか。無理、しなくていいよ」
「お休みの日はね、ベッドでね、ゴロゴロしたりね、パジャマで過ごしたりしたいの」
「じゃあ、今度の日曜日は、そうしようか」
優しい笑顔。
優しい声。
優しい言葉。
優しいね。慶太、あなたはずっと、優しかった。こんなワガママな私に、ずっと、ずっと、優しい。
どうして、こんな私に、みんな優しくしてくれるの?
こんな、ワガママで、バカな私なのに……
私なんて、誰からも愛される資格のない、人間なのに……
「俺さ、ずっと、杉本からお前を奪ったこと、重荷に感じてた」
そう……だったんだ……
「杉本に、言われたんだ。真純のこと、大切にしてくれって。俺の代わりに、守ってやってくれって」
将吾が? そんなことを?
「なのに、俺は、約束を守れなかった。お前のこと、傷つけてばっかりで……あの夜のこと……本当に悪かった」
あの夜……乱暴に、した夜のことよね……
「もう、そんなの、いいの」
正直に言うと、私は、あの時、そんなに傷つかなかった。
それどころか、ちょっと嬉しかった。初めて、あんなに、慶太が私に気持ちをぶつけてくれて、嬉しかった。
でも、あの頃の私は、素直になれなくて、寝室を出て、鍵をかけた。傷ついたのは、きっと、慶太のほう。
「将吾のとこ、行ったのね……」
「ああ。お前が出て行って、もう、ダメだなって、俺にはもう、無理だって、謝りに行ったんだ……でも、言えなかった。杉本は、お前とよく似た女と、一緒になってて……兄妹だとか、言って……」
知ってたんだ……慶太も、そのこと……
「もっと早く、話せればよかったな」
言葉が足りないのは、私だね。
言って欲しいことを、言えばいいんだよね。
言いもしないで、受けとめてくれない、なんて……勝手よね、私。
ねえ、慶太。私ね、本当はね……あなたに、甘えたいの。
甘えてもいい? 私、キャリアウーマンでも、なんでもないの。
本当はただの、普通の、アラフォーのおばさんなの。
普通の……『女』なの……
「慶太にね……もっと、甘えたいの」
「甘えてくれよ、思う存分」
「慶太、私ね……もう、会社……疲れたの」
「そうか。無理、しなくていいよ」
「お休みの日はね、ベッドでね、ゴロゴロしたりね、パジャマで過ごしたりしたいの」
「じゃあ、今度の日曜日は、そうしようか」
優しい笑顔。
優しい声。
優しい言葉。
優しいね。慶太、あなたはずっと、優しかった。こんなワガママな私に、ずっと、ずっと、優しい。