マネー・ドール -人生の午後-
 今日はVネックの紺色のTシャツに、白のカプリパンツ、慶太はピンクのポロシャツに、グレーのバミューダ。
この日のために、二人でラルフローレンで揃えたの。
ピンクのポロシャツって、どうなんだろう。慶太って、ピンクとか、水色とか、そういう色選ぶけど、なんか……けばくない?
まあ、そうね。私達は、見るからに、リッチなオシャレ夫婦。杉本家と中村家とは、ちょっと違う感じ。

 コーヒーと、パンと、適当にお皿に入れて、テーブルに戻ると、遠くから見てもお似合いやなって、将吾が笑った。

「今日、どうする?」
中村くんが納豆を混ぜながら言った。
「観光でもしようぜ」
男三人は、スマホで検索して、盛り上がってる。
私は、さっきの将吾の発言にチクチクしてて、黙って笑って、パンを食べた。

 チェックアウトする慶太を残して、駐車場に行くと、将吾の娘ちゃん二人が、私達の車に乗りたいって言い出した。
「ダメよ、ワガママいわないの」
聡子さんが言うけど、聞く様子はなくって、将吾も困ってる。
 私は別にいいんだけど、慶太はどうなんだろう。
 ああ、戻ってきた。うーん、こうやって見ると、慶太って……チャラい。そのでっかいサングラス……おじさんなのに、ねえ。
「ねえ、車、乗せてあげてもいいよね?」
「うん、構わないよ」
 慶太が言うけど、聡子さんは、汚したら大変だから、と遠慮してる。
「そんなの気にしないでよ。さ、乗って」
慶太は笑って、ベンツのリアドアを開けた。
「ええんか?」
「いいよ、別に」
「じゃあ、頼むわ。汚したり、ワガママいうなよ」
将吾が娘ちゃん達にそう言うと、彼女達は嬉しそうに、車に乗った。
「すみません、ワガママで……」
「いえ、全然」
だって、慶太の車って、結構、汚いもん。

「シートベルト、してね」
慶太が言うと、娘ちゃん達は、はーい、だって。
最初はちょっと緊張してたけど、すぐに慣れたみたいで、いろんな話をしてくれた。
かわいいのね。ほんと、子供って、かわいい。

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