マネー・ドール -人生の午後-
「ねえ、おばさんって……」
「おばさんとか、言っちゃダメなんだよ!」
碧ちゃんの言葉に、凛ちゃんが慌てて言った。
最近は、誰々ちゃんのママ、とかいう言い方しないといけないんだって。
難しいのねえ。子供にまで気を遣わせて、どうするのかしら。
「おばさんだよねえ。いいよ、おばさんで」
凛ちゃんは、ほっとした顔で、頷いた。
「おばさんって、パパのお友達なの?」
「うん、幼馴染なの」
「何歳?」
「パパと同じだよ」
「ええ、じゃあ、ママより年上! 全然違うねー」
「どう、違うの?」
「すっごく、キレイ!」
「こんなキレイなママだったら、自慢だよねー」
姉妹は顔を見合わせて言った。
「どうして? ママもキレイじゃない。優しいし、素敵よ」
正直に言うと、私は、聡子さんが、うらやましい。あんな風に、飾らなくても、将吾みたいな人と結婚して、こんなにかわいい子供がいて……
「そうかなぁ……」
「パパとママ、仲良しでしょ?」
「うーん、時々ケンカしてるよ」
「そりゃ、夫婦だもん。ケンカもしないと」
夫婦……それは、自分に言いきかせた言葉。
「パパとママの秘密、教えてあげよっか」
凛ちゃんが恥ずかしそうに、ちょっともじもじしながら言った。
「秘密?」
「うん、パパとママね……」
二人は目を合わせて笑ってる。
「寝る前に、チュウするんだよ!」
恥ずかしそうに言って、姉妹はキャッキャと笑った。
でも、私は、引きつった笑顔で、頷くのが精一杯。
そんな私の顔を、慶太が横目で見てる。
ごめんなさい……私……笑わないと……笑わなきゃ……
「へえ、仲良しなんだね!」
何も言えない私の代わりに、慶太が言った。
「おじさんとおばさんも、チュウする?」
「するよー、仲良しだもん」
「寝る前?」
「寝る前もだし、朝とかもするよ」
「今日もした?」
「したよ。なぁ、真純」
慶太は右手で私の手を握った。
その手は、そうだろ? って、言ってる。俺とお前は、仲良しで、夫婦で、チュウ、したよなって。
「うん。そうね……」
「おじさんもカッコイイから、美男美女カップルだね!」
凜ちゃんは、無邪気にそう言って、シートの間から、私達の顔を見た。
「美男美女なんて、言葉知ってるんだ!」
「昨日ね、パパとママが言ってたの」
将吾が?
「お似合いだろ?」
「うん、とっても!」
「おじさんさ、おばさんのこと、超好きなんだよ」
それはきっと、私に向けた言葉。
慶太……こんな私……許してくれるの?
「えー! ラブラブじゃん!」
姉妹は嬉しそうに笑って、慶太も一緒に笑った。
私も笑ったつもりだったけど、きっと顔は、固まったまま。
信号待ちで、将吾の車の右側に、慶太が並んで、後ろの窓から、聡子さんが手を振った。
「窓、開けていい?」
「顔とか、出しちゃダメだよ」
「ママー!」
「いい子にしとるんか!」
将吾の声が聞こえた。
「してるよー!」
私は、窓の方を見れなくて、ずっと俯いていた。
「ワガママ、してない?」
「してないよー」
聡子さんの声が聞こえる。子供たちの声も聞こえる。
将吾の声、慶太の声……みんな、楽しそう。
私以外のみんなは、楽しそう。私だけ……笑わないと。楽しそうにしないと。ダメ、泣いちゃダメ!
「おばさんとか、言っちゃダメなんだよ!」
碧ちゃんの言葉に、凛ちゃんが慌てて言った。
最近は、誰々ちゃんのママ、とかいう言い方しないといけないんだって。
難しいのねえ。子供にまで気を遣わせて、どうするのかしら。
「おばさんだよねえ。いいよ、おばさんで」
凛ちゃんは、ほっとした顔で、頷いた。
「おばさんって、パパのお友達なの?」
「うん、幼馴染なの」
「何歳?」
「パパと同じだよ」
「ええ、じゃあ、ママより年上! 全然違うねー」
「どう、違うの?」
「すっごく、キレイ!」
「こんなキレイなママだったら、自慢だよねー」
姉妹は顔を見合わせて言った。
「どうして? ママもキレイじゃない。優しいし、素敵よ」
正直に言うと、私は、聡子さんが、うらやましい。あんな風に、飾らなくても、将吾みたいな人と結婚して、こんなにかわいい子供がいて……
「そうかなぁ……」
「パパとママ、仲良しでしょ?」
「うーん、時々ケンカしてるよ」
「そりゃ、夫婦だもん。ケンカもしないと」
夫婦……それは、自分に言いきかせた言葉。
「パパとママの秘密、教えてあげよっか」
凛ちゃんが恥ずかしそうに、ちょっともじもじしながら言った。
「秘密?」
「うん、パパとママね……」
二人は目を合わせて笑ってる。
「寝る前に、チュウするんだよ!」
恥ずかしそうに言って、姉妹はキャッキャと笑った。
でも、私は、引きつった笑顔で、頷くのが精一杯。
そんな私の顔を、慶太が横目で見てる。
ごめんなさい……私……笑わないと……笑わなきゃ……
「へえ、仲良しなんだね!」
何も言えない私の代わりに、慶太が言った。
「おじさんとおばさんも、チュウする?」
「するよー、仲良しだもん」
「寝る前?」
「寝る前もだし、朝とかもするよ」
「今日もした?」
「したよ。なぁ、真純」
慶太は右手で私の手を握った。
その手は、そうだろ? って、言ってる。俺とお前は、仲良しで、夫婦で、チュウ、したよなって。
「うん。そうね……」
「おじさんもカッコイイから、美男美女カップルだね!」
凜ちゃんは、無邪気にそう言って、シートの間から、私達の顔を見た。
「美男美女なんて、言葉知ってるんだ!」
「昨日ね、パパとママが言ってたの」
将吾が?
「お似合いだろ?」
「うん、とっても!」
「おじさんさ、おばさんのこと、超好きなんだよ」
それはきっと、私に向けた言葉。
慶太……こんな私……許してくれるの?
「えー! ラブラブじゃん!」
姉妹は嬉しそうに笑って、慶太も一緒に笑った。
私も笑ったつもりだったけど、きっと顔は、固まったまま。
信号待ちで、将吾の車の右側に、慶太が並んで、後ろの窓から、聡子さんが手を振った。
「窓、開けていい?」
「顔とか、出しちゃダメだよ」
「ママー!」
「いい子にしとるんか!」
将吾の声が聞こえた。
「してるよー!」
私は、窓の方を見れなくて、ずっと俯いていた。
「ワガママ、してない?」
「してないよー」
聡子さんの声が聞こえる。子供たちの声も聞こえる。
将吾の声、慶太の声……みんな、楽しそう。
私以外のみんなは、楽しそう。私だけ……笑わないと。楽しそうにしないと。ダメ、泣いちゃダメ!