マネー・ドール -人生の午後-
 そして、私たちは、連絡先を交換して、それぞれの車に乗って、東京へ帰る。
帰りのベンツには、もうあの子達は乗っていない。
あんなに賑やかだったリアシートには、もう、誰もいない。

「かわいかったね」
「子供?」
「うん」

 私達は、二人だけ。二人だけの、家族。私達をつなぐものは、私達、だけ。

「……真純」
「何?」
「俺さ……」
「うん」
「真純のこと、離さないから」
 慶太は、そう言った。大きなチャラいサングラスをしてるから、顔はわからないけど、たぶん、泣いていた。

「離さないで」

 慶太。絶対に、私を離さないで。そうじゃないと、私……

 怖いの。自分が、怖い。
 あなたがいないと、あなたの手が緩むと、きっと私、全てを壊してしまう。
あの子達の笑顔を、奪ってしまう。誰もを、不幸にしてしまう。

 だから慶太、私を……あなたのところに、縛り付けていて……
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