マネー・ドール -人生の午後-
殴られた。一日中、暑い日も、寒い日も、雨の日も、雪の日も。
殴られて、家に入れてもらえなくて、ゴミ箱をあさって……万引きもしたっけ。
食事なんてなかった。私の食べるものなんて、どこにもない。
布団も、お風呂も、服も、文房具も、なにもない。
知らないオトコが日替わりで家に来て、そんな夜は、一晩中、外にいた。
将吾と一緒に、駅や公園や学校で、いつも二人で、肩を寄せて、暗い、寒い、暑い夜を、過ごした。
ただ、今、生きるために、私は、生きていた。
今月の給食費、まだやねえ。お母さんに、ちゃんと言うただか?……先生、言うたらね、叩かれるの。
体操服、また忘れたの?……先生、こうてもらえんじゃけ。
懇談のお知らせ、ちゃんと見せた? 門田さんだけじゃ、まだ返事ないの。……そんなもん、来るわけないけえ……
「先生、ごめんなさい。お母さん、仕事、忙しいけえ……」
みんな、かわいい服を着て、綺麗な顔で、新しい文房具で、流行りの靴で、なのに、私は、いつも、薄汚れた、ボロボロの服で、髪の毛なんて、切ったこともなくて、穴の空いた靴、痩せた顔、痣だらけの体、拾った鉛筆。
門田さんって、汚い。
靴、穴あいとる。
風呂、入っとるんかな。臭いなあ、あいつ。
「真純、気にせんでええ。今晩、銭湯行こう」
「そげなお金、もっとらん」
「俺がどうにかしたる」
そのお金、盗んできてたんだよね。そのパンも、ノートも、服も、将吾、私のために……
「お家、戻りんさい」
「……嫌です」
「お母さん、今度こそ、君にひどいことしないってゆうとんさる」
施設に入っても、あのオンナは、すぐに泣きながら、私を迎えに来た。
今度こそ、ちゃんと面倒見ます。
これからは絶対、暴力をふるいません。
あの子がいないと、死にそうです。
「真純、今度逃げたら、殺すけえね。おめえの価値なんか、お国からもらう金だけじゃけ。よう覚えとけ!」
早く、大人になりたかった。大人になって、あの女の元から、出たかった。
なのに……
殴られて、家に入れてもらえなくて、ゴミ箱をあさって……万引きもしたっけ。
食事なんてなかった。私の食べるものなんて、どこにもない。
布団も、お風呂も、服も、文房具も、なにもない。
知らないオトコが日替わりで家に来て、そんな夜は、一晩中、外にいた。
将吾と一緒に、駅や公園や学校で、いつも二人で、肩を寄せて、暗い、寒い、暑い夜を、過ごした。
ただ、今、生きるために、私は、生きていた。
今月の給食費、まだやねえ。お母さんに、ちゃんと言うただか?……先生、言うたらね、叩かれるの。
体操服、また忘れたの?……先生、こうてもらえんじゃけ。
懇談のお知らせ、ちゃんと見せた? 門田さんだけじゃ、まだ返事ないの。……そんなもん、来るわけないけえ……
「先生、ごめんなさい。お母さん、仕事、忙しいけえ……」
みんな、かわいい服を着て、綺麗な顔で、新しい文房具で、流行りの靴で、なのに、私は、いつも、薄汚れた、ボロボロの服で、髪の毛なんて、切ったこともなくて、穴の空いた靴、痩せた顔、痣だらけの体、拾った鉛筆。
門田さんって、汚い。
靴、穴あいとる。
風呂、入っとるんかな。臭いなあ、あいつ。
「真純、気にせんでええ。今晩、銭湯行こう」
「そげなお金、もっとらん」
「俺がどうにかしたる」
そのお金、盗んできてたんだよね。そのパンも、ノートも、服も、将吾、私のために……
「お家、戻りんさい」
「……嫌です」
「お母さん、今度こそ、君にひどいことしないってゆうとんさる」
施設に入っても、あのオンナは、すぐに泣きながら、私を迎えに来た。
今度こそ、ちゃんと面倒見ます。
これからは絶対、暴力をふるいません。
あの子がいないと、死にそうです。
「真純、今度逃げたら、殺すけえね。おめえの価値なんか、お国からもらう金だけじゃけ。よう覚えとけ!」
早く、大人になりたかった。大人になって、あの女の元から、出たかった。
なのに……