マネー・ドール -人生の午後-
(4)
二十二年前のあの日、高校の卒業式が終わって、私は、そのまま、家には帰らず、施設にも帰らず、電車に飛び乗って、広島駅に向かった。
広島駅には、将吾が荷物を持って待っててくれて、私の姿を見て、大きく手を振った。
「卒業、おめでとう」
将吾は私の制服姿を見て、微笑んだ。
「着替えてくる」
だけど、もう、こんな制服も、卒業証書も、いらない。
駅のトイレで、トレーナーとジーンズに着替えて、制服と卒業証書は、ゴミ箱に捨てた。
鞄も、生徒手帳も、全部、捨てた。
将吾と二人で、小さなボストンバッグを持って自由席に並んだ。
その日は金曜日で、すごい人で、自由席は満席だった。
私達は座ることができず、それどころか、まるで通勤ラッシュのような車内で、人熱に酔う私を、将吾が守るように抱き寄せて、私達は東京までの六時間を、立って過ごした。
あれから……二十二年。こんな未来、想像、してなかった。
隣にいるのは、将吾じゃなくて、セレブ家庭育ちの夫。そして私達は、都会の、セレブ夫婦。
幸せになれた。
ねえ、将吾、私、今、本当に幸せなんだよ。
あなたと別れて、あなたを捨てて、私は幸せを手に入れたの……
将吾……バカな女だって、笑ったよね。金に目のくらんだ、バカで、浅はかな……あの人と同じだって……
広島駅には、将吾が荷物を持って待っててくれて、私の姿を見て、大きく手を振った。
「卒業、おめでとう」
将吾は私の制服姿を見て、微笑んだ。
「着替えてくる」
だけど、もう、こんな制服も、卒業証書も、いらない。
駅のトイレで、トレーナーとジーンズに着替えて、制服と卒業証書は、ゴミ箱に捨てた。
鞄も、生徒手帳も、全部、捨てた。
将吾と二人で、小さなボストンバッグを持って自由席に並んだ。
その日は金曜日で、すごい人で、自由席は満席だった。
私達は座ることができず、それどころか、まるで通勤ラッシュのような車内で、人熱に酔う私を、将吾が守るように抱き寄せて、私達は東京までの六時間を、立って過ごした。
あれから……二十二年。こんな未来、想像、してなかった。
隣にいるのは、将吾じゃなくて、セレブ家庭育ちの夫。そして私達は、都会の、セレブ夫婦。
幸せになれた。
ねえ、将吾、私、今、本当に幸せなんだよ。
あなたと別れて、あなたを捨てて、私は幸せを手に入れたの……
将吾……バカな女だって、笑ったよね。金に目のくらんだ、バカで、浅はかな……あの人と同じだって……