マネー・ドール -人生の午後-
「真純? どうしたの? 痛い?」
私は、また、泣いてしまっていた。
今までみたいに、涙が出る程度じゃなくって、もう、堰を切ったように、涙が止まらない。
「真純、どうしたんだよ……ごめん、無理にした?」
慶太は慌てて、私の体を抱き起こした。
「ごめん……私……」
嗚咽が始まって、うまく話せない。
「む……昔のこと……お……思い……思い出して……」
「お母さんの、こと?」
違う……そうじゃない……私は、最低な女……
正直に言ったら、どうなるんだろう。慶太は、私のこと、嫌いになるよね……怒るよね……
でも、もう、このままだと、慶太のこと、裏切ってしまう。
現に今日……田山くんと……
「慶太……私……」
「なんでも、話してよ」
「わからないの……」
「何が、わからないの?」
「幸せなの……すごく……慶太のこと、好きだし、愛してるし……絶対に失いたくないの……」
「俺もだよ」
「なのに……私ね……考えてしまうの……思い出してしまうの……」
慶太は、全部わかったみたいな目をして、一瞬、目を閉じて、そして、優しく、微笑んだ。
「なあ、真純……真純はさ、杉本と俺以外に、付き合った人、いる?」
「いない」
「俺はね、真純と付き合う前、何人もの女の子と付き合ったんだ」
「うん……」
「同時に、付き合ってたこともある」
俯く私の手を握って、慶太は続けた。
「別れるとね、思い出すんだよ、その子のこと。新しい彼女のことが好きになればなるほど、前の彼女と、比べちゃうんだ。でも、徐々にね、忘れていく。新しい彼女が、全部になっていくんだよね。だから、前に言ったろ? 杉本のこと、好きでもいいからって。だって、あんなに真剣に真純のこと愛して、必死に守ってきた彼氏のこと、そんなすぐに忘れられるわけがないじゃん」
「でも……もう、何年も……」
「空白、だっただろ? 俺たち」
「空白……」
「俺達はお互いに、気持ちを殺して、生活してた。でも、あの日からさ、俺たちはほんとの恋人になって、夫婦になった。……たぶん、その時からだろ? 杉本のこと、考え始めたの」
「うん……」
「今の俺の目標はね、真純を杉本から完全に奪うことなんだ」
慶太は、怒りもしてなくて、悲しんでもなくて、ただ、優しい笑顔で、私の隣にいる。
「完全に奪って、杉本なんかより、俺といて幸せだって、絶対思わせてやるって、それが、俺の目標」
……なんで、そんなに、優しいの? なんで、そこまで、私のこと、思ってくれるの?
「慶太のこと、本当に好きなの」
「わかってる」
「だけど、私、なんでそんなに慶太が私のこと、愛してくれるのか、わかんないの……」
「それは、ほら、惚れちゃったってやつ?」
「こんな私……慶太みたいな人に、相応しくないと思うの」
「真純、お前はさ、もっと自信持っていいんだよ。こんなにキレイで、素直で、優しくて、頭もいいし、料理もうまいし、最高じゃん」
慶太は、私の涙を拭って、髪を撫でた。
「俺の妻は、真純しかいない。真純の夫も、俺しかいない。俺達は、絶対に夫婦なんだよ」
私は、また、泣いてしまっていた。
今までみたいに、涙が出る程度じゃなくって、もう、堰を切ったように、涙が止まらない。
「真純、どうしたんだよ……ごめん、無理にした?」
慶太は慌てて、私の体を抱き起こした。
「ごめん……私……」
嗚咽が始まって、うまく話せない。
「む……昔のこと……お……思い……思い出して……」
「お母さんの、こと?」
違う……そうじゃない……私は、最低な女……
正直に言ったら、どうなるんだろう。慶太は、私のこと、嫌いになるよね……怒るよね……
でも、もう、このままだと、慶太のこと、裏切ってしまう。
現に今日……田山くんと……
「慶太……私……」
「なんでも、話してよ」
「わからないの……」
「何が、わからないの?」
「幸せなの……すごく……慶太のこと、好きだし、愛してるし……絶対に失いたくないの……」
「俺もだよ」
「なのに……私ね……考えてしまうの……思い出してしまうの……」
慶太は、全部わかったみたいな目をして、一瞬、目を閉じて、そして、優しく、微笑んだ。
「なあ、真純……真純はさ、杉本と俺以外に、付き合った人、いる?」
「いない」
「俺はね、真純と付き合う前、何人もの女の子と付き合ったんだ」
「うん……」
「同時に、付き合ってたこともある」
俯く私の手を握って、慶太は続けた。
「別れるとね、思い出すんだよ、その子のこと。新しい彼女のことが好きになればなるほど、前の彼女と、比べちゃうんだ。でも、徐々にね、忘れていく。新しい彼女が、全部になっていくんだよね。だから、前に言ったろ? 杉本のこと、好きでもいいからって。だって、あんなに真剣に真純のこと愛して、必死に守ってきた彼氏のこと、そんなすぐに忘れられるわけがないじゃん」
「でも……もう、何年も……」
「空白、だっただろ? 俺たち」
「空白……」
「俺達はお互いに、気持ちを殺して、生活してた。でも、あの日からさ、俺たちはほんとの恋人になって、夫婦になった。……たぶん、その時からだろ? 杉本のこと、考え始めたの」
「うん……」
「今の俺の目標はね、真純を杉本から完全に奪うことなんだ」
慶太は、怒りもしてなくて、悲しんでもなくて、ただ、優しい笑顔で、私の隣にいる。
「完全に奪って、杉本なんかより、俺といて幸せだって、絶対思わせてやるって、それが、俺の目標」
……なんで、そんなに、優しいの? なんで、そこまで、私のこと、思ってくれるの?
「慶太のこと、本当に好きなの」
「わかってる」
「だけど、私、なんでそんなに慶太が私のこと、愛してくれるのか、わかんないの……」
「それは、ほら、惚れちゃったってやつ?」
「こんな私……慶太みたいな人に、相応しくないと思うの」
「真純、お前はさ、もっと自信持っていいんだよ。こんなにキレイで、素直で、優しくて、頭もいいし、料理もうまいし、最高じゃん」
慶太は、私の涙を拭って、髪を撫でた。
「俺の妻は、真純しかいない。真純の夫も、俺しかいない。俺達は、絶対に夫婦なんだよ」