マネー・ドール -人生の午後-
(5)
朝早く、慶太の携帯が鳴った。
「え? 本当ですか? よかった……はい、わかりました」
「どうしたの?」
「お母さんの意識、戻ったって、病院から」
え……そう、なんだ……
「俺は費用のこととかで病院行くけど、真純はどうする?」
「費用?」
「入院代とか、いろいろかかってるみたいだから」
「そんなの、関係ないじゃん」
「そういうわけにはいかないよ」
「……迷惑かけてるね……」
「言ったろ? 俺のお母さんでもあるって」
慶太は笑って、シャワーを浴びに行った。
テレビをつけると、朝のローカル番組が流れていて、懐かしいタレントさんが、レポーターとかしてる。
ここ、東京じゃないんだ。二十二年。ここで過ごした年数よりも、長い時間、私は東京で過ごしてる。
そうよね。
もう、逃げちゃいけない。
私は東京で、佐倉真純になった。
薄汚れた、門田真純じゃない。
鏡に映った私は、明るいウエーブの髪で、水色のツメで、胸元にはダイヤのティファニーが光って、どこからどう見ても、都会の、女。
「私も、病院行くね」
「大丈夫?」
「うん」
それに、あのことをはっきりさせたら、きっと私は、慶太だけを愛すことができるようになる。
もう、逃げない。
あんな人に、いつまでも、負けていられない。
「え? 本当ですか? よかった……はい、わかりました」
「どうしたの?」
「お母さんの意識、戻ったって、病院から」
え……そう、なんだ……
「俺は費用のこととかで病院行くけど、真純はどうする?」
「費用?」
「入院代とか、いろいろかかってるみたいだから」
「そんなの、関係ないじゃん」
「そういうわけにはいかないよ」
「……迷惑かけてるね……」
「言ったろ? 俺のお母さんでもあるって」
慶太は笑って、シャワーを浴びに行った。
テレビをつけると、朝のローカル番組が流れていて、懐かしいタレントさんが、レポーターとかしてる。
ここ、東京じゃないんだ。二十二年。ここで過ごした年数よりも、長い時間、私は東京で過ごしてる。
そうよね。
もう、逃げちゃいけない。
私は東京で、佐倉真純になった。
薄汚れた、門田真純じゃない。
鏡に映った私は、明るいウエーブの髪で、水色のツメで、胸元にはダイヤのティファニーが光って、どこからどう見ても、都会の、女。
「私も、病院行くね」
「大丈夫?」
「うん」
それに、あのことをはっきりさせたら、きっと私は、慶太だけを愛すことができるようになる。
もう、逃げない。
あんな人に、いつまでも、負けていられない。