マネー・ドール -人生の午後-
 目が覚めると、時間は八時をまわっていた。真純はまだ、俺の胸の中で眠っている。
微かにあいた唇。長い睫。少しはだけた、バスローブ。

「真純……おはよう。朝だよ」
「ん……」
真純は赤ん坊のように、俺の胸に丸まって、まだ眠いって、目をこすった。
しょうがないな……もう少し、寝かせてやるか……
 軽く頬にキスして、真純の体を抱きしめた。
涙が乾いた髪からは、甘い匂いがする。
同じシャンプーなのに、不思議だな。きっと、これが、真純の匂い、なんだ。
俺の胸に、真純の柔らかい胸があたる。若い頃より、少し小さくなったけど、それでもまだ、大きいよな。
細いウエストに、上がったケツ。真純は、四十には思えないいい体で、相変わらず俺は、朝から欲情している。

 寝ぼけたまま、俺のキスを受けて、真純はダメって、つぶやいた。多分、俺が太ももに、押し付けたから。
ああ、そうか……生理だって言ってたな……
「キスだけなら、いい?」
「うん……」
キスだけで、終わる自信はないけど、でも、俺は真純の唇を貪って、首筋に舌を這わせて、胸元へ……
マシュマロみたいに柔らかい胸の谷間に顔を埋めると、暑いのか、汗が溜まっていて、舐めてみると、やっぱりしょっぱい。
「くすぐったいよ」
真純はクスクス笑って、目を開けた。
 完璧なメイクの真純は、人形みたいにキレイだけど、すっぴんの真純は、やっぱり門田真純の面影があって、どことなく、聡子さんに似ていて、俺は、どっちの真純も好きで、愛おしい。
「やっぱりさ、胸の谷間って、暑いの?」
「どうして?」
「汗、かいてるから」
「脇の下に汗かくようなもんかな?」
なるほど。素直に納得。
「脇の下も汗かいてるかな?」
俺は真純の腕を上げさせて、脇の下を舐めてみた。真純はキャハハって笑って、くすぐったそうに、寝返りをうった。
「ちょっと汗かいてた」
「もう、変なの!」
うん、なんか、変だな、俺。どうしたんだろう。
「シャワー浴びてくるね」
「一緒にしよう」
「ダメ。生理だもん」
「……血が出る?」
「うん」
「見てみたい」
「えっ! ダメだよ!」
「どうしても?」
「当たり前じゃん! 恥ずかしいよ!」
そうなんだ……恥ずかしいんだ。
真純は、変なのって、笑いながら風呂へ行った。
しばらくして、シャワーの音が聞こえてきた。
一緒に入りたかったな……
て、何、ガキみたいなこと言ってんだ、俺。

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