マネー・ドール -人生の午後-
ふと、携帯のバイブの音がした。俺の携帯かと思ったけど、震えているのは真純の携帯だった。
何度かコールして、相手は諦めたのか、一旦切れたけど、もう一度、かかってきた。
急ぎの用件かもしれない。誰からだろう。
俺は真純の携帯をバッグから出して、着信の相手を見た。
画面には、田山携帯、って書いてある。
田山……昔から、あいつだけは、好きになれない。
俺は、無意識のうちに、電話に出ていた。
「おはようございます、田山です。どうですか? 大丈夫ですか?」
大丈夫? お前が心配する必要はないよ。
「部長?……話しにくいですか?」
どういう意味だよ。お前は、真純にとって、部下でしかない!
「田山くん、久しぶりだね」
ふん、電話の向こうの田山の顔が目に浮かぶ。
「……あ、ご主人……ですか……ご無沙汰しております」
「真純、今、シャワー浴びてるんだよ。急用?」
「シャワー……そうですか……いえ、急用ではありません。部長に元気がなかったので、気になって電話しました」
「そうなんだ。心配してくれてありがとう。でも、俺がついてるから」
そう、俺がついてるんだよ。お前になんか心配してもらわなくても、俺が真純を守ってる。
「そうですか。なら、安心です。なんだか、部長、お母さんのことで、追い込まれてたみたいだったから」
こいつ……!
田山は挑発的な発言を、スラスラと続ける。
「僕は毎日、部長のそばにいますからね。少しの様子の変化でもすぐにわかるんですよ」
うう、考えてみれば、俺なんかより、ずっと長い時間、こいつは真純と一緒にいるよな。俺は帰れない日もあるし、休みのない週もある。
「そう、頼りになる部下がいて、真純も安心だな。よろしく頼むよ、部下として、真純を支えてやってくれ」
「部下として、ですか」
「それ以外に、何かあるの?」
「佐倉さん、俺は……」
田山が言いかけた瞬間、風呂から真純が出てきて、自分の携帯を持つ俺に、驚いている。
「誰?」
「田山くんだよ。……ああ、田山くん、真純、今上がってきたから、代わるね」
「田山くん?……ああ、おはよう。え?……うん……そう、ありがとう。大丈夫だから、心配しないで。……明日からはちゃんと会社行くから。……うん、じゃあ、何かあったら…………うん……じゃあね」
何度かコールして、相手は諦めたのか、一旦切れたけど、もう一度、かかってきた。
急ぎの用件かもしれない。誰からだろう。
俺は真純の携帯をバッグから出して、着信の相手を見た。
画面には、田山携帯、って書いてある。
田山……昔から、あいつだけは、好きになれない。
俺は、無意識のうちに、電話に出ていた。
「おはようございます、田山です。どうですか? 大丈夫ですか?」
大丈夫? お前が心配する必要はないよ。
「部長?……話しにくいですか?」
どういう意味だよ。お前は、真純にとって、部下でしかない!
「田山くん、久しぶりだね」
ふん、電話の向こうの田山の顔が目に浮かぶ。
「……あ、ご主人……ですか……ご無沙汰しております」
「真純、今、シャワー浴びてるんだよ。急用?」
「シャワー……そうですか……いえ、急用ではありません。部長に元気がなかったので、気になって電話しました」
「そうなんだ。心配してくれてありがとう。でも、俺がついてるから」
そう、俺がついてるんだよ。お前になんか心配してもらわなくても、俺が真純を守ってる。
「そうですか。なら、安心です。なんだか、部長、お母さんのことで、追い込まれてたみたいだったから」
こいつ……!
田山は挑発的な発言を、スラスラと続ける。
「僕は毎日、部長のそばにいますからね。少しの様子の変化でもすぐにわかるんですよ」
うう、考えてみれば、俺なんかより、ずっと長い時間、こいつは真純と一緒にいるよな。俺は帰れない日もあるし、休みのない週もある。
「そう、頼りになる部下がいて、真純も安心だな。よろしく頼むよ、部下として、真純を支えてやってくれ」
「部下として、ですか」
「それ以外に、何かあるの?」
「佐倉さん、俺は……」
田山が言いかけた瞬間、風呂から真純が出てきて、自分の携帯を持つ俺に、驚いている。
「誰?」
「田山くんだよ。……ああ、田山くん、真純、今上がってきたから、代わるね」
「田山くん?……ああ、おはよう。え?……うん……そう、ありがとう。大丈夫だから、心配しないで。……明日からはちゃんと会社行くから。……うん、じゃあ、何かあったら…………うん……じゃあね」