マネー・ドール -人生の午後-
ちょっとドキドキしながら、お邪魔しますって呟いて、ドアを開けた。
部屋の中はあんまりきれいには片付いてなくて、朝脱いだTシャツとスエットパンツが、クロゼットの前に丸めてある。
デスクの上も……結構、散らかってる。これで仕事できるのかしら。
思わず苦笑して、デスクの上をちょっと片付けた。
乱雑に積まれた書類の下から出てきたのは、私の写真。キャンプに行った時の写真じゃん。慶太、写真とか、見てるんだ。でも、こうやって見ても、私と慶太って、お似合いね、なーんて。
って、こんなことしにきたんじゃなくて。
クロゼットの奥は物入れになってて、使わないものとか、ここに入れてたはず。中も、あんまりきれいじゃないわねえ。
そういえば、昔っから、あんまり片付けたりしてなかったよね。森崎さんに、掃除してもらってないのかな。
物入れには、古いダンボールが積んであって、中には流行りの過ぎた服とか、慶太の卒業アルバムとかが入ってる。
こんなの、初めて見る。学生服の慶太、かわいい! やっぱり、お金持ちのボンボンって感じねえ。あ、ボンボン、なんて言ったら、怒られちゃう?
でも、昔っからイケメンなんだ。あんまり変わってないかも。
何個か同じようなダンボールがあったけど、ノートは見つからない。うーん、捨てちゃったのかな……
一番下には、一際古いダンボールが二つ。これ、何が入ってるんだろう。前の部屋の時からあるよね。引っ越しの時、見た気がする。
恐る恐る開けてみると……
えっ?……なんでこんなものが……
中に入っていたのは、将吾と暮らしてたころに着ていた服とか、エプロン。
もうすっかり黄ばんでいるけど、間違いない。
東京に来て、お金がなくて、服なんか全然買えなくて……懐かしい。
この黄色のワンピース、家着だよね……このエプロン、東京に来て、部屋が決まって、進学のお祝いにって、将吾が買って来てくれたんだっけ。
ああ、このブラウス、大学の入学式に着て、塾のバイトもこれだった。この、スカートと。懐かしい、ほんと……
あっ、このショートパンツ……慶太と花火に行くのに、買ったんだっけ……こんなに短いパンツ穿いたの初めてで、ちょっと、恥ずかしかった。
でも、なんでこんなものがあるんだろう。全部置いて来たはずなのに。
カビ臭い箱の中には、遠い思い出が詰まってて、私は夢中で一つ一つ、箱から出していく。
二つ目の箱の中は、なけなしのお金で買った、ブランド品。変わりたくて、必死で揃えた、流行の服やバッグ。
短いスカートや、高いピンヒールに、将吾と毎晩ケンカしたっけ……
こんな派手な服、似合わないとか、そんな濃い化粧するなとか……変わっていく私を、将吾はどんな気持ちで見ていたんだろう。
派手な都会の女になっていく私。……心を、捨てていく私。
部屋の中はあんまりきれいには片付いてなくて、朝脱いだTシャツとスエットパンツが、クロゼットの前に丸めてある。
デスクの上も……結構、散らかってる。これで仕事できるのかしら。
思わず苦笑して、デスクの上をちょっと片付けた。
乱雑に積まれた書類の下から出てきたのは、私の写真。キャンプに行った時の写真じゃん。慶太、写真とか、見てるんだ。でも、こうやって見ても、私と慶太って、お似合いね、なーんて。
って、こんなことしにきたんじゃなくて。
クロゼットの奥は物入れになってて、使わないものとか、ここに入れてたはず。中も、あんまりきれいじゃないわねえ。
そういえば、昔っから、あんまり片付けたりしてなかったよね。森崎さんに、掃除してもらってないのかな。
物入れには、古いダンボールが積んであって、中には流行りの過ぎた服とか、慶太の卒業アルバムとかが入ってる。
こんなの、初めて見る。学生服の慶太、かわいい! やっぱり、お金持ちのボンボンって感じねえ。あ、ボンボン、なんて言ったら、怒られちゃう?
でも、昔っからイケメンなんだ。あんまり変わってないかも。
何個か同じようなダンボールがあったけど、ノートは見つからない。うーん、捨てちゃったのかな……
一番下には、一際古いダンボールが二つ。これ、何が入ってるんだろう。前の部屋の時からあるよね。引っ越しの時、見た気がする。
恐る恐る開けてみると……
えっ?……なんでこんなものが……
中に入っていたのは、将吾と暮らしてたころに着ていた服とか、エプロン。
もうすっかり黄ばんでいるけど、間違いない。
東京に来て、お金がなくて、服なんか全然買えなくて……懐かしい。
この黄色のワンピース、家着だよね……このエプロン、東京に来て、部屋が決まって、進学のお祝いにって、将吾が買って来てくれたんだっけ。
ああ、このブラウス、大学の入学式に着て、塾のバイトもこれだった。この、スカートと。懐かしい、ほんと……
あっ、このショートパンツ……慶太と花火に行くのに、買ったんだっけ……こんなに短いパンツ穿いたの初めてで、ちょっと、恥ずかしかった。
でも、なんでこんなものがあるんだろう。全部置いて来たはずなのに。
カビ臭い箱の中には、遠い思い出が詰まってて、私は夢中で一つ一つ、箱から出していく。
二つ目の箱の中は、なけなしのお金で買った、ブランド品。変わりたくて、必死で揃えた、流行の服やバッグ。
短いスカートや、高いピンヒールに、将吾と毎晩ケンカしたっけ……
こんな派手な服、似合わないとか、そんな濃い化粧するなとか……変わっていく私を、将吾はどんな気持ちで見ていたんだろう。
派手な都会の女になっていく私。……心を、捨てていく私。