君のとなりで
ほら、まただ。実結を目の前にしたら何をいったら良いのか、どうやって接すれば良いのかわからなくなる。

好きすぎて、わからない。

いつからこんな風になったんだ?多分、実結を女として意識し始めた頃からだ。

「颯、あのね…」

「お前さ、俺と付き合って辛いんだったら俺達幼なじみに戻ったほうがいいんじゃねえの?」

こんなの真っ赤なうそだ。幼なじみになんか戻りたくもない。

「えっ…なんで、なんでそんなこと言うの?」

また泣きそうな顔をする実結。

「だって俺と付き合ってからお前泣いてばっかじゃん。」

本当は泣かせる俺の行動が悪いのに…最低だ、こんなこと実結に言うなんて。

「俺よりお前のこと大切にしてくれるやつ、いると思うし…だから…」

バカだ、自分からいっておいてこの先が怖くて言葉にできないなんて。

「…っ…バカっ!颯の大バカ野郎!!!」

実結はそう言うと俺の胸に向かって勢いよく突進してきた。

そして俺のコートに顔を埋めたまま、泣きながらしゃべる。

「あたしはっ…颯じゃなきゃ、だめなのに!颯以外の人じゃなくて、っ…ひっく…颯が好きなのにっ…ふっ…颯のことが大好きなのに、どうしてそんなこと言うのっ…」

小さな体を震わせながら話す実結の言葉に、箍が外れた。

実結の体をぎゅっときつく抱きしめる。
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