君のとなりで
葵が真剣な顔で俺を見て深呼吸をひとつした。「颯はさ、みゅーのことどう思ってる?」

葵の言葉にドキッとしたの今でも覚えてる。

葵だけが実結をみゅーと呼んでいた。俺はそれが悔しくて、なんだか二人だけの特別みたいで。

「別に、ただの幼なじみだよ。」

もちろんこんなの真っ赤な大嘘で、本当は実結のことが好きだった。

それを葵に知られたくなくてこんなことを言ってしまった。

「そっか、俺はさ、みゅーのこと好きなんだ。」

っ…やっぱりそうなのか…

「だから、俺、絶対みゅーに好きだって言いにまた日本に帰ってくるよ。」

なんでそんなこと俺に言うんだよ…俺だって実結のことが好きなのに。

だけどバカなガキだった俺はその葵の言葉に頷いてしまったんだ。

あれから五年、ついに葵が実結に思いを伝えに帰ってくる。

俺は約束をやぶってしまった。
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