君のとなりで
だいぶぐっすり眠っているから起こさないほうがいいよね。

そっと起こさないように立ち上がる。

そして颯から離れようとした瞬間、眠っているはずの颯の手があたしの手をつかんだ。

えっ!?

慌てて颯の顔を見るけど、目は完全に閉じている。

寝てるんだよね…?

「……くな…」

くな…?寝言かな?

あたしはもう一度ベッドの脇に座った。

少し顔が赤い。

「…行かないで…」

目を閉じたまま小さく颯の唇が動いた。

あたしはそんな颯がなんだかかわいく思えて、いつもあたしにしてくれてるみたいにその柔い少し茶色の髪を撫でた。

「そばにいるよ…ずっと、隣にいるよ。」

聞こえてるはずないのにそう言うと微かに颯の口角が上がった気がした。
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