君のとなりで
あおくんはいつもすごく優しくて、あたしが颯に意地悪されて泣いてるときも、転んじゃったときも、一番に慰めてくれてた。

そんなあおくんにあたしはいつも甘えていたんだ。

優しくて、頼りになるお兄ちゃんのような存在だった。

あおくんのことはもちろん大好き。でもそれは颯に対する好きとは違うってことに、あたしはとっくに気がついてる。

颯への好きって気持ちは、誰にも感じたことがないような気持ち。

お母さんや、お父さん、真結ちゃんとも、早紀ちゃんや昂君とも違う。

特別で、大切で、考えるだけで幸せになる、そんな気持ちなの。

自分でもよくわからないけど、颯は特別だってことは確かなんだ。

「あおくん、あたし…」

「待って、今はいい。俺、明後日イギリスに帰るんだ。」

明後日!?そんなの、聞いてないよ!

「そんな顔しないで?でも今日と明日は俺のこと考えてほしい。だからみゅーの気持ちは明日の夜、聞かせてほしい。」

何も言えないあたし。だって口を開けば、涙が目からこぼれそうなんだもん。

「みゅー、明日の夜、屋上で待ってる。」

あおくんがそう言うと、ちょうど観覧車はもうすぐ地面に戻る頃で。

観覧車から降りて、あーちゃんたちと合流してからの帰りの電車では、なんだかみんな静かだった。
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