君のとなりで
こいつ、もしかしてずっと待ってたのか?図書室が閉まるのは6時だからこの寒い中一時間半も待っていたことになる。

膝をかかえたまま動かない実結。近づくとすやすやと小さな寝息が聞こえた。

よくこんなとこで寝れるな…風邪ひくぞ?早く起こさねーと…

「颯ー!良かったな!俺、お邪魔だし帰るな。バイバーイ!」

そう言うと手を振り、さっさと走っていった。

はぁ…どうすんだよ…謝ればいいのか?なんか怒ってたみたいだし。とりあえず起こすか…

「実結、おい、起きろ。」

肩を揺するがまだ眠ったままで目を覚まさない。学校って8時にはしまるよな?もう7時50分だ。しょうがねえな…

俺は小さな実結を背中におぶり、足早に玄関を出た。

幸い校舎には生徒はいなくて俺たちが目立つことはなかった。こんなに寒いのに実結がいる背中は温かい。

「ん…」

耳元で小さく聞こえた声。起きたのか?

「颯!?何してるの?」

そりゃ起きたのが他人の背中だったら普通驚くよな。

「お前、あんなとこで寝てたら風邪ひくぞ。」


「いいから!とりあえずおろして!」

そう言って足をバタバタさせるので下ろしてやる。

「ごめんね、重かったでしょ?」

全然重くなく、むしろ軽すぎて心配になったくらいだったんだけど、なんとなくからかいたくて。

「うん、お前、太った?」

「えっ!やっぱり?最近食べすぎてたのかも…お母さんのご飯、いつにもまして美味しくて…」

なんか一人でぶつぶつ言ってるし。おもしれえな…

「先帰ってろって言ったのに。」

もう8時近い。日菜さんも心配するだろ。
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