君のとなりで
傘、あったっけ?

降ってきたら嫌だなぁ…

「実結先輩、どうしたんですか?顔暗いっすよ?」

星野君の顔が急に近くなって、思わず後ずさる。

「そんな逃げなくても、俺は襲ったりしないですよー!」

そうだよね…自意識過剰なのかも。

「雨降るかなって。傘、持ってきてないんだよね。」

「あー…降りそうですね。俺の折り畳み傘、貸しましょうか?」

えっ?

でもそうしたら星野君が濡れちゃうのに。

「いいよいいよ!だってそれじゃあ星野君が風邪引いちゃうよ。」

たしかもうすぐ一年生は二泊三日の宿泊研修のはず。

風邪引いちゃったらいけなくなっちゃうもん。

「実結先輩は優しいですね。俺、好きになっちゃいそうです。」

「へ?」

また心臓に悪い冗談を言うなー…

って!

ええっ!?

「あ、間違えた。好きになっちゃいそう、じゃなくて好きですだった。」

星野君は、立ち上がってそう言うと、あたしの目の前に座った。

「実結先輩、好きです。」

これって告白されてるんだよね?

どうしてあたしなの?

だってまだ知り合って三ヶ月もたってないのに。

「どうして?って顔してますね。俺、入学した時からずっと先輩が好きだったんです。」


どうしてあたしみたいな地味な存在に気づいていたの?


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