君のとなりで
実結は俺がアメリカに行くっていったら、どんな反応をするだろう。

自惚れているかもしれないけど、泣くだろうか。

こんな安らかな顔を、歪ませたくない。

そっと柔らかい髪に触れる。

そばにいたい。

バスケをしたい。

二つの欲が俺の脳内を渦巻く。

我が儘だよな。

どっちもなんて、無理なんだ。

選択しなければならない、二つ。


…だとすれば、俺が選ぶべきなのは、どっちなのか。

少し前の俺なら、バスケで留学することをもちろん優先させたと思う。

恋愛ごときで将来の夢を諦めるなんてバカだと思っていた。

だけど、今は迷っている。

たかが高校生同士の恋愛。

これからもずっとあいつのそばにいることなんて当たり前だと思っていた。

小さい頃からずっと隣にいた実結。

当たり前すぎて、いなくなることが想像できない。

頬に触れると、ほんのすこし反応して、うっすら目を開ける。

「…ん…颯…」
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