君のとなりで
心のなかでは見ないように、聞かないようにしようとしてるのにそれより先に体が反応してしまう。

未練ありまくりで、情けない。

「ほらー、藤咲さんじゃ届かないでしょ?俺がやるって。」

「ありがとう、都築君!」

その声だけで、今実結がどんな表情でいるのかわかってしまう。

それぐらいに俺は実結のことを知りつくしてんだ。


鞄を掴むとモヤモヤした気分のまま急ぎ足で玄関に向かった。

靴を履こうと下駄箱を開ける。

「颯君!」

その聞こえた声に思わずうんざりしてしまう。

いつのまにいたのか、俺のとなりには西田がいた。

「なに?」

「冷たいなぁ、あたしね、颯君に大切な話があるの。」

こっちは早く帰りたいって言うのに…

「颯君、さっきの話聞いたよ、実結ちゃんと別れたんだってね。」

…こいつ、もしかして山下との会話聞いてたってことか?

最悪だ、よりによって西田に知られるとは。

めんどくさいことになりそうだ。


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