君のとなりで
「あっ、続きやんなきゃ!やっぱり都築君、上の方やってもらえるかな?あたしじゃ上手く描けないみたい。」

そう言うと、都築君は頷いて椅子も使わずスラスラとイラストをトレースしていく。

あたしもしたの方を必死で描いていく。

気がつけば教室には紅い夕日が差し込み、時計の針は六時前を指していた。

「そろそろ帰ろっか?」

都築君が手を止めた。

「そうだね、あたし道具片付けてくるよ。都築君は先に帰ってて。」

「いいよ、一緒にいく。スクリーンは重そうだし俺が持つよ。」

あたしの腕からひょいとスクリーンを抜き抱えてくれた。

やっぱり優しい人なのかな。

よくわかんないや。

「藤咲さん、今日は中原と帰んないの?」

その言葉に胸がつまる。

どう答えればいいの?

「うん…」

「ふーん、でもすごいよね。あの中原と付き合ってるなんて。」

もう、付き合ってないよ。

あたしたち、別れたんだよ。

心のなかで言ってみるけど声には出せなかった。

まだまだ颯が好きなの。

忘れられないよ…


< 388 / 612 >

この作品をシェア

pagetop