君のとなりで
「昂君…ありがとね。」

「…違うんだ。」

へ?

違うって何が?

「運んだのは、俺じゃない。」

そうなの?

でもさっき早紀ちゃん、昂君が運んでくれたって言ってたのに…

じゃあ、誰なのかな。

お礼言わなきゃ。

「誰?あたし、その人にちゃんとお礼言いたい。」

「それはっ…早紀に言わないでね、俺が教えたこと。」

なんだろ…そんなにわかっちゃダメなことなのかな。

あたしが頷くと昂君は口を開いた。

「颯だよ。」

一瞬耳を疑った。

そう…颯?

なんで…

「颯にも言うなって言われてる。だからお礼は言わなくていい。あいつもわかってるから。」

何を分かってるの?

あたしは意味わからないよ。

あの日の光景が頭に思い浮かぶ。

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