君のとなりで
顔の三センチ先には都築君の顔があって。

ち、ちかいっ!

「ご、ごめんねっ!」

慌てて離れる。

一瞬びっくりしたように目を大きくした都築君。

「藤咲さん、ちっちゃいんだからこういう仕事は俺に任してカウンターで返却リストの整理でもしててよ。」

都築君は何事もなかったかのように立ち上がるとあたしが戻そうとしていた本をさっさと本棚に戻し始めた。

「ありがとう。じゃあよろしくね。」

ちっちゃいんだから、は余計だけどね。



五時半になり図書室の鍵を閉めてあたしと都築君は校舎を出た。

「じゃあね、ばいばい。」

バス通学の都築君はあたしと反対方向のバス停に向かう。

「うん、また明日ね。」


都築君に背を向けて歩き始める。

一人で帰る帰り道はまだなんとなく慣れなくて。


颯と一緒に帰ってたときはキラキラして見えたあの街灯も、星空もなんだかくすんでみえる
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