君のとなりで
次に実結がいった言葉に耳を疑った。

だって、聞こえてきたその単語は

「颯のことが、嫌いだから。」

嫌いだなんて面と向かってだれかに言われたのははじめてだ。

それも一番言われたくなかった相手に言われる。

だけど次に沸いてきた感情は、怒りでも、悲しみでもなく、疑問だった。

実結はだれかを嫌ったりするようなやつじゃない。

昔からの付き合いだ。

間違うはずがない。

実結がひとの悪口をいってるのも聞いたことがないのに。

なんでだ?

「じゃあね、さよならっ!」

横をすり抜けた一瞬、あいつの目には大粒の涙がたまっていたのを俺は見逃さなかった。

なんで嫌いとかいっといて泣くんだよ。

なにがしたいのかわかんねえよ。

確かに俺があいつにして来たことを考えれば嫌われても当然かもしれないけど。

だけど実結が嫌いなんて自分の意思で思っていたとしても、わざわざ直接俺に言ったりしないだろう。
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