君のとなりで
「ねえ、颯、今年も行くでしょ?」

暗号を言うような言い方。

だけど、それが何を意味しているのかわかるのは、毎年当たり前のことだから。

「今年はね、昂君の合格を祈るの!」

実結が行っているのは毎年大晦日に実結、昂、山下と行く近所の神社の初詣のことだ。

小学生の頃から毎年四人で初詣に行ってその後、実結と屋上で初日の出を見るのが恒例。

「昂の合格だけでいいの?」

すると少し考えるような仕草をする実結。


「…後はね、颯が楽しくバスケ出来ますように!」

このベランダの距離がもどかしい。

なんでこんなに可愛いことを言うんだ?

「じゃあ俺は実結がちゃんと一人で大学に通えますようにって祈る。」

って言ったら…

「それくらい出来るよ!」

やっぱり、そういう顔をすると思った。

「実結ー!早く掃除しなさい!」

部屋の中から日菜さんが実結に言った。

「はーい!じゃあね、また後でね!」

ベランダの段差に躓きながら部屋に入っていった。

毎年大晦日、神社で俺が思うのは、来年もこうして実結といられたらいいなって思うことくらいだ。

神様とか信じる質でも年でもない。

でも、ただ実結が隣にいて、一緒にいて、それがまた続いていく。

それに感謝してやまない。
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