君のとなりで
なんとかお参りを済ませ、境内から離れるとやっと普通にお互いの声が聞こえる。

「さっきなんて言ったの?」

「えっとね、あけましておめでとうございます。今年もよろしくね。」

そう言うと何が嬉しいのかニコニコ笑って。

「あっ!でも、年賀状はちゃんと出したよ!口で済まそうとか思ってないからね!」

慌てる実結が、なんだかものすごく可愛く思えた。

「今年もよろしくな。」

口に出すと、なんとなく恥ずかしくて、実結の顔から目をそらした。

こんなこと、改まって言うの、なんか照れる。

「うん!」


人混みの中、ようやく山下と昂を見つけ出し、山下と実結の提案でみんなでおみくじを引いた。

「やった!あたし、大吉!」

「俺もっ!大学受かる気がしてきた!」

ハイタッチして喜び合う山下昂。

俺は…

…俺も、大吉だ。

「颯はー?なんだったー!?」

昂が俺の手元を覗きこんでくる。

「おっ!お前も大吉じゃん!ここのおみくじ、大吉しかねえんじゃないの?」

そういえば実結は?

さっきから一言も話してないけど。

「実結は?どうだった?」

「…凶…」

実結はものすごく沈んだ表情でおみくじを見つめている。

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