君のとなりで
最初は思ってもみなかった。

好きって思ってもらえてるのかなっていつも不安だった。

本当にあたしは、颯の彼女なのかなって。

颯は無愛想だし、照れ屋で、恋愛が苦手。

だから、初めて告白されたとき以来好きって言われたときは、嬉しくて、どうにかなっちゃうかと思ったくらい。

それから何回か言ってくれた「好き」って言葉。

言われるたびに、また言ってほしいって思うようになっちゃって。

わがままだけど、お願い!

あたしの颯の腰にまわした腕が颯によって解かれた。

体を反転させて、颯と向い合うかたちになる。

うわぁ…

自分からあんなこと言っておいて、なんだかものすごく恥ずかしくなってきちゃった。

「なっ、なーんてね!えへへっ!帰ろっか…、」

ちょうどやってきたエレベーターに乗ろうと歩き出したのに、進まなかったのは颯があたしを抱きしめたから。

「…言い逃げですか?」

えっ!だって…嫌なのかと…

それになんで敬語!?

「言ってほしいんでしょ?」

少し赤い顔で、あたしを見下ろす颯。
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