君のとなりで
それは写真の横のコメントを書くスペースにあった。

(カメラマン、なかはらせい・ふじさきまゆ)

子供の落書きみたいな下手くそな字で書いてあった。

有り得ねえ…

この写真、絶対に見せられない。

兄貴と真結ちゃん、このこと忘れてるよな。

だってもう、十五年くらい前のことだし。

それより、片付けだ。

アルバムを閉じると、ダンボールの奥底にしまい込んだ。

続きをしようと、新しいダンボールに手をかけた瞬間、机の上に置いておいた携帯が鳴り出す。

ディスプレイ画面を見ると、珍しい人物の名前があった。

「もしもし。」

「よう、颯、元気か?」

相変わらず、聞くまでもなく元気そうな父さんの声。

母さんと毎日電話をしていることは知ってるけど、俺にかけてくるなんて珍しい。

「どうしたの?」

「飛行機のチケットのことだ。美恵が卒業式終わってからの日付の便のをとってくれって言ってたから探したんだけど、3月13日の夜の便のしかなくてな。それでいいな?」

卒業式は3月10日、向こうの大学が始まるのは日本と同じ、4月からだ。

だから俺の中の予定では3月20日以降に日本をたつ予定だったけど、せっかくとってくれたんだ。

「うん、ありがとな。」
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