君のとなりで
あたしが言い返すと、ケタケタと面白そうに笑う颯。

その笑顔にあたしの胸はまた大きく鳴る。

「どうした?」

エレベーターに乗り込むと、あたしの顔を覗きこむ。

顔が近い!

「あっ!そうだ!あのねっ…」

第二ボタンのこと言わなきゃ!

そう思ったのに

「お二人さん!おはよー!」

あたしの声は誰かによって遮られた。

「なんだ、空か。」

そこにいたのは学ラン姿の空君。

「今日卒業式だろ!おめでと!」

「ありがとう、空君。」

空君にもたくさん協力してもらっちゃったな。

年下なのに、頼ってばっかり。

「実結、時間!」

颯が携帯を見て走りだした。

あたしは空君に手を振りながら慌ててついていく。

「はあっ…はあっ…」

どうにかこうにか学校に滑り込んだ。

最後の最後までこんなあたしたちって、ほんとに成長したのかな。

なーんてことを考えながら、教室に入った。

「みーゆ、おはよう!」

「おはよう、早紀ちゃん、あゆちゃん!」

今日で大好きな二人とこうして挨拶することもなくなっちゃうんだな。

二人がいてくれたから、あたしは毎日が楽しくて、辛いときも支えてくれたから、やってこれたんだ。

「聞いてよ、あゆってば桐生とのこと惚気けてくるんだけど!」

「早紀っ!惚気けてなんかないもん!ねっ、実結?」

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