君のとなりで
何回もあたしの方を振り返りながら早紀ちゃんと昂君は校門を出て行った。

桐生君とあゆちゃんも帰っちゃったし、本当に一人になっちゃった。

あたしは思い出がたくさん詰まった校舎を一人で散歩。

ここの下駄箱でよく待ち合わせしたよね。

あそこの傘立てに寄っかかってたら転びそうになったりして。

「実結ちゃん。」

その声に思わず肩がびくっと上がる。

「西田さん…」

あのクリスマスの日からこうして面と向かって話すのは久しぶりだ。

「実結ちゃん、ごめんなさい。」

西田さんはそういうと頭を下げた。

「あたし、実結ちゃんが羨ましかったの。かわいくて、みんなから愛されてて、颯君からも。あたしには持ってないものいっぱい持ってる実結ちゃんが羨ましかったの。」

あたしが羨ましい?

西田さんのほうがあたしなんかよりもずっと綺麗で、あたしが持ってないものたくさん持ってるのに。

「あんな酷いことして、本当にごめんなさい。」

あの時のことを考えたら今でもゾワゾワする。

知らない男の人に触られて、恐くて。

そして何より、颯を傷つけようとしたことに許せなかった。

颯の夢を壊すことが一番あたしにとって怖いことだったから。

だから絶対許せないって思ってた。
< 541 / 612 >

この作品をシェア

pagetop