君のとなりで

いつも side颯

「寒い…」

卒業式が終わって、バスケ部の後輩と話をしていたら女子がボタンを下さいと言って来た。

俺にはこんなボタン、何がいいのかわかんねえけど。

…とか言いつつ、第二ボタンは自分のポケットの中にある。

それは昨日の夜のこと。

風呂から出て寝る準備をしていたらベッドの脇に転がしていた携帯が震えた。

それはめずらしく、真結ちゃんからのメールだった。

『第二ボタン、あげちゃダメだよ。』

たった一行、それだけのメール。

昔からなんとなく真結ちゃんには逆らえない俺は、なんとか第二ボタンを死守できた。

だけどその代わりに、ブレザーには2つしかボタンがついてなかったのでワイシャツのボタン、そしてネクタイまで取られてしまい、今は寒さに震える。

実結、俺を待ってるって山下が言ってたけどどこにいるんだろ。

探しに行こうかな…

「颯先輩!」

誰もいない体育館に息を切らしながら入ってきたのは水橋。

「ご卒業、おめでとうございます!ボタン…ってなんですか、その格好!」

俺の服装を見てアハハと笑い出した。

「仕方ねえだろ、無理矢理取られたんだから。」

「モテるのも大変ですね~」

絶対思ってないだろ!

「じゃあ、ボタンないですね、あーあ、欲しかったな!」
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