君のとなりで
だけどそんなに特別なもので、だったら俺だってやっぱり実結にあげたいって思うだろ。

「ありがとう!これで二個目だね!」

二個目?

ああ、そういえば中学の学ランのボタンもあげたんだった。

あの頃から変わらない思い。

「帰ろ。」

「うん。」

校舎を出たら本当に、最後。

もう明日からここにこの制服で通うことはないんだ。

あっという間に過ぎていった三年間にはいろいろなことがあった。

もうすぐ咲きそうな、蕾の膨らんだ桜の並木道を並んで歩く。

この桜が満開になる頃には俺はもうここにはいない。

「ねえねえ!公園よって帰ろう?」

実結がマンションの近くにある、小さい頃よく遊んだ公園を指差した。

そういえば一年前の今頃、ここで葵と茜と話したっけ。

実結とギクシャクしてて、その時の葵の登場には焦った。

「颯、ここに座って!」

そばにあった木のベンチに座り、横を叩く。

俺が座ると小さなベンチでは肩と実結が触れ合いそうなほど近い。

それだけで俺の心臓は鳴る。

「颯!これ!」

実結はベンチから立ち上がると俺の前に立ち、小さな袋を差し出した。

「なにこれ?」

「お守り!向こうに行って開けてね!」

絶対だよ!と念を押すように言うから見たかったけど頷くしかない。
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