君のとなりで
屋上にはたくさんの思い出が詰まってる。

全部全部、あたしを成長させてくれた大切な、思い出。

「実結、」

颯が優しくあたしの名前を呼んだかと思うと、ぎゅっと抱きしめられる。

温かくて、安心するこの空間。

このまま時間が止まっちゃえばいいのに。

「実結、ありがとう。俺、お前がいたから…やってこれた。お前がそばにいたから…」

そんなこと、ずるい。

いつもなら絶対に言ってくれないくせに。

あたしの涙腺はついに決壊。

頬に熱い涙がたくさん伝って、あたしも颯の背中に腕を回した。

「…まだ、最後じゃないもん…だからまだ、そんなこと言わないで…」

まだお別れの言葉なんて言わないで。

ありがとう、なんて聞きたくないよ。

「そうだな、ごめん。…明後日さ、実結と行きたいとこある。」

颯の腕があたしを離し、真っ直ぐにその瞳に捉えられる。

「うん、どこ?」

「それは明後日の楽しみ。」

どこなんだろう?

颯と突き合ってもう二年以上だけど、ちゃんとしたデートはまだ二回くらいしかしたことない。

「帰ろっか。」

「うん!」

最後は笑って見送らなきゃ!

一人でもちゃんとやっていけること、証明しなきゃね。
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