君のとなりで
旅館につくと、荷物を案内された部屋に置いてひとまず休憩。

朝からずっと移動していたからか、少し疲れた。

時間はもうすぐ四時。

夕飯にはまだ早い。

「畳って気持ちいいねぇ。」

ゴロンと畳に寝転びながら体を伸ばす姿はまるで猫みたいだ。

「颯も寝転んでみて、気持ち良いよ!」

自分の横をポンポン叩いて笑う。

そんなにか?

俺は実結の言うままにそこに寝転がった。

「ほんとだ。」

確かになんだか気持ちいい。

この藺草の香り、ばあちゃんちを思い出すっていうか…

「でしょ?」

急に実結がこっちを向くからその顔と顔の距離はわずか五センチほどになった。

「…っ」

目の前には実結の大きな目と長いまつげが揺れている。

俺はその白い頬に手を伸ばした。

少しずつ顔を近づけていくと、そっと目を閉じた実結。

…グルルル…

ん?

変な音がして実結の顔を凝視すると、閉じていたはずの目を見開いている。

「…何今の?」

大体想像はつくけど。

「ちっ、違うの!今のはっ…その、あ!鳥!鳥が鳴いたの!」

鳥って…苦し紛れに言い訳する実結がおかしくてつい笑ってしまった。

「もう!笑わないでよ!」

「腹減ったの?」

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