君のとなりで
「さて、そろそろ夕飯だし、その前に一回風呂はいる?」

そう言う颯に何も言えなくて、そのまま頷いちゃうあたしは意気地なし。

緊張、してるよ。

だけど嫌な緊張じゃない。

このドキドキは颯にドキドキしてるんだよ。

あたし、颯にもっと近づきたいのに。

一人で湯船に浸かりなぎら空を見る。

もう薄暗くて、少しずつ星が出てきている。

前に言われたことがあったっけ。

「大切だから、どうすればいいのかわからない。」って。

颯があたしのことを大切に思ってくれてるから、その行為に躊躇してくれてるのはすごく嬉しいけど、でも…

「ねえねえ、さっきの男の子見た?」

「ああ、あの高校生くらいの!めちゃくちゃ格好良かっよね!芸能人かな?」

あたしが湯船でボーッとしていると入ってきた大学生くらいのお姉さんのふたり組。

もしかして、颯のことかな。

初対面の人にもこんなにもてちゃって、やっぱりあたし、不安だよ。

不安じゃないなんて自分に言い聞かせてるけど、本音の本音は不安でいっぱいなんだ。

だけどあたしが不安がったり、泣いちゃったりしたら颯に迷惑かけちゃうから。

それだけは絶対に嫌だから。
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