君のとなりで
再び実結の柔らかい唇に重ね合わせる。

「…んっ…んんっ…ふ…」

少し開いた口から漏れる甘い声にもっともっと欲しくなって。

更にキスをして。

そしてついに、

浴衣に手をかけた。

「…やっ…」

ここまで無我夢中で実結に触れてたい、その一心だった。

だけど我に返って、廉さんの言葉を思い出した。

「今回の旅行、許すけど実結に手出すなよ。」

大切な娘を思う父親の気持ち。

いくら小さい頃から本当の息子みたいにかわいがってくれてる俺でも。

「颯?どうしたの?」

急に手を止めたことに戸惑ったのか、俺の浴衣の裾を掴む実結。

「…ごめん。」

よく見ろよ、泣いてんじゃん。

やっぱりこういうことは本当に、心からお互いが思い合わないと出来ない。

今はまだ、実結はその心の準備が出来てない。

俺にあわせてくれてるだけだ。

「どうして謝るの?」

俺ははだけかけていたその浴衣を直し、実結を強く抱きしめた。

そしてそのまま寝転んだ。

「…やめちゃうの?」

俺の腕の中で、上目遣いに見てくるその表情には不安の色も見えて。

「今は、こうしてたい。」

このまま実結の体温を、感触を、感じて眠れるだけでいい。
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