君のとなりで
マンションについて、エレベーターが五階につく。

昨日は帰ってきたばかりでバタバタしてたからこうしてゆっくり二人になれるのも久しぶり。

この手を離してしまえば、それぞれの部屋に帰っていくんだろうか。

って何考えてんだ!

どうせ明日も明後日も会えるのに。

手を離そうとすると、実結は離さずに、下を向いた。

「実結?」

「一人はやだ…颯の部屋に、行きたい…」

その言葉に思わず喉がなる。

それが何を意味しているのか、分かっていってる?

もう俺、多分我慢はできない。

「…どういう意味なのか、わかってる?俺の部屋に来るってことが。」

親たちも多分まだまだ帰ってこない。

もしかしたら、朝まで飲んでいるかもしれない。

結婚式に来てくれた懐かしい友達と話し込んでいたし。

もう俺達は、子供じゃない。

夜、恋人同士が部屋で二人きりになる。

それがどういうことか、わかってんの?

「…分かってるよ、あたし、ちゃんと覚悟決めてるもん…」

あの時からずっと、考えていた。

どうしたらいいのか、わからなかった。

怖かったんだ。

実結を傷つけてしまうのが。

実結を泣かせてしまうのが。

だけど、実結は覚悟している。

俺は部屋のドアを開けた。
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