君のとなりで
「実結、緊張してるのは俺もだから。」

そう言うと、やさしくあたしの頭をなでてくれた。

いつもそう。

辛い時も、泣きたい時も、颯の手が優しく頭を撫でてくれたら前向きになれる。

魔法の手なんだ。

「颯、大好きっ…」

「俺も好き…」

颯の指があたしの指に絡まって、ぎゅっと強く握られた手。

「実結…」

見たこともない切ない表情であたしの名前を呼んで。

呼ばれ慣れた名前なのに、なんだかすごくドキドキした。

そして、颯があたしに覆いかぶさって、その刹那、一気に体に痛みが突き抜けた。

「っ…!」

なにこれ!!

痛いっ!!

痛いよ!!

声に出せないくらいの激痛に何とか歯を食いしばって耐えるのに必死。

初めては痛いとは聞いていたけど、こんなにも痛いんだ!

我慢しようとしてたのに、そのあまりの痛さに目から涙が溢れ出る。

「実結、大丈夫か?」

颯があたしを心配そうに見ている。

本当は全然大丈夫なんかじゃないけど、ここでやめて!なんて言えないよ。

「…っ…だ、大丈夫…」

それだけ言うのがやっと。

「…はっ…み、…ゆ…力、抜いて?」

あたしがしゃべると、なんだか颯も苦しそうだ。
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