君のとなりで
抜くってどうやって?

痛くてそんなことできないよ!

「実結。」

すると颯の繋いでない方の手があたしの頬を優しくなでて、唇にはまた甘いキスが降ってきた。

颯の広い背中にしがみついて、今にも飛びそうな意識の中で必死になった。

痛いけど、苦しいけど、幸せ。

大好きな人と、一番近くになれたんだ。

やっと、あたし、颯に一番近づけた。

こんなにも優しくて、嬉しい痛みがあったなんて、知らなかったよ。

颯に出会って全部知ったの。

恋するって気持ちも、好きって思う気持ちも。

嫉妬することも、辛いことも。

全部颯が教えてくれたんだよ。

颯がいなかったら知ることが出来なかった。

ありがとう、颯。

だからこれからも色んな感情を教えてね?

颯とならきっと、どんな苦しいことも乗り越えていける気がする。

こんなふうに思えるのも、きっと颯だけだから。

「好き…」

颯の体が揺れて、あたしは意識を手放した。
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