君のとなりで

希望 side颯

さっきから部屋の中を行ったり来たり。

そわそわして落ち着かない。

「そーう、落ち着けって。」

呆れたように笑うのは大人っぽくスーツを着こなす葵。

「…遅い。」

「女の支度には色々かかるんだよ。」

半年ほど前に大学から付き合い始めた彼女と結婚した疾風が言う。


去年の花火大会の日、保育士として毎日忙しく働く実結と中学校の体育教師として働く俺は、久しぶりに二人でゆっくり会えていた。

付き合って七年目、そろそろ俺はあることを意識していた。

それは実結との未来のこと。

これからずっと一緒にいてほしい。

つまりは、結婚。

婚約指輪のサイズを測るのは無防備な実結だから簡単にわかった。

問題はどう切り出すか。

何年付きあおうが、俺はには関係なく未だに実結の言葉でいうとレア単語とかいうのを口に出すのは恥ずかしい。

「今年も綺麗だったね!また来年も来れたらいいね!」

いつもと変わらない笑顔で笑う実結。

そうだ、俺はこの笑顔を守っていきたい。

この先もずっとこいつのそばにいたいんだ。

今日が終わればまた俺は俺の日常に、実結は実結の忙しい日々に戻ってしまう。

グタグタ悩んでいても何も始まらない。
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