君のとなりで
バタンと扉が開いて、スーツを着た昂が入ってくる。

「実結ちゃん、準備できたって!」

そう言うと、俺のそばにニヤニヤしながらやって来て。

「颯より先に見ちゃった!実結ちゃんのウエディングドレス姿!」

こいつ…

「山下に言うぞ?」

「いいよー!別に!実結ちゃん、めちゃくちゃキレイだった!」

わざとだな…

「じゃあ俺達は式場に行ってるな!」

「颯、カメラは任せとけ!」

スタジオカメラマンとして働く葵が言う。

葵と疾風はそう言い残し、部屋を出て行った。

「ほら、早く!」

何故か俺よりテンションの高い昂についていく。

「颯、ちゃんと実結ちゃんに素直に言ってやれよ!」


昂が部屋の前で止まり、意味深に笑ってからノックをすると、中から山下の返事が帰ってきた。

「やっときた!さっきから本命が来なくて待ちわびてたんだからね!」

山下と市川さんに急かされながら、部屋に入ると、ドレッサーの前に座る実結の後ろ姿が目に入る。

「実結、颯君きたよ!」

市川さんの一声で立ち上がって振り向いた実結。

「…っ…」

息を呑んだ。

いつもより大人っぽくメークしているせい?

髪をアップにしているせい?

今まで見てきた中で一番きれいな実結。

今までだって何度かわいい、や綺麗だって思ってきたのかわからない。
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