君のとなりで
でも、今日の実結は本当に綺麗で。

「さあ、邪魔者は退散!」

山下の一声で部屋にいたみんながわらわらと出て行った。

出て行く際に、相変わらずの山下が俺にいった。

「ちゃんと思ったこと言ってあげてね!」

昂と同じ事言ってる。

さすがは夫婦になっただけはあるな。

「颯、かっこいいね!すごく似あってるよ、タキシード!」

ドレスで駆け寄ろうとしたからよろめく実結。

「こけんなよ、まだ始まってないんだから。」

こいつならバージンロードで転ぶとかやりかねないからな。

ていうか、やりそう。

その絵を想像して思わず笑ってしまった。

「転けません!」

こんな日でもムードのない俺達。

まあ、俺達らしいって言ったらそうだけど。

「…颯、あたしのドレスどうかな。」

少し不安そうに俺を見上げる。

昂と山下の声が脳内に響いた。

『素直に』

『ちゃんと思ったこと言って』

そうだ、思ったことを。

「…すげえ綺麗。」

そう言うと、照れたように、でもすごく嬉しそうに笑う。

その笑顔にまた愛おしさを感じる。

これからずっと一緒に、俺達は歩いていく。

小さな頃からつないできたこの手をもう、離さないから。
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