出会えたこと それだけで
テストが返ってきた。
いつも通りくらいの結果だった。

「ただいま」
「おかえり。ねぇ里奈、塾に行ってみない?」
「どうして」
「より確実に志望校に受かるために、一応ね?」
「わかったよ。いいよ」
「じゃあ今から電話するわね。体験授業行ってみようか」
お母さんはチラシを探して、これこれ、と電話を片手に番号を丁寧に打つ。
とりあえず私はペンケースと携帯、バックを持っていった。

「はじめまして」
「よろしくお願いします」
駅前の、とても綺麗な塾。
でも、有名なだけあって頭がいい人も悪い人もいる。
とりあえず、教室へ。
たくさん仕切りがあって、すごいかんじ。
「成績は、どれくらい?」
「ええと、だいたいいつも1位です」
「へぇ!すごいね。じゃあこっち来て」
3人ずつに仕切られた机。
真ん中に先生。私はその右に座る。
「この塾はね、2:1で教えてるのが特徴なんだ。グループもあるけどね」
「へぇ、そうなんですか」
「あっ、来た来た。」
先生がドアの方に体を向けた。
「こんばんは」
「紹介するね。こいつ、佐倉高なんだ。今日はこいつと授業になるよ」
「「あ!」」
そこにいた男子高校生と声が重なる。
だって、そこにいたのは、頭から離れない、生徒手帳を落とした彼だったから。
「すごい偶然だね笑」
「そうですね笑」
「なんだ、知り合い?」
「まぁそんなかんじかな」
準備してくるから少し待ってて、と先生が席を離れる。
「名前は?」
「里奈です」
「へぇ、俺は春樹。今日は体験?」
「はい、そうです」
「入塾してよー笑」
「あぁ、たぶん入ります」
「ほんと?ねぇメアド教えてほしいな」
「あ、いいですよ」
驚きつつ、心の中でガッツポーズをした。
スマホを向き合わせる。
お互いのデータが入ってくる。
すごい、恋が進んでいくような感覚がした。
「あの、さ。俺……」
「…え?」
ガチャ
「お待たせ!」
先生が戻ってきた。
「やっぱり何でもない」
「あ、はい…」
とりあえずその日は2時間授業をうけ、入塾の手続きをした。
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