出会えたこと それだけで
放課後
約束の放課後、着替えて、どきどきしながら駅への道を走る。
時計のところに、春樹さんはいた。
「春樹、さん」
春樹さんは、ん?という目で、スマホから顔をあげる。
「里奈だぁー笑
おしゃれだね、かわいい」
正直、そんなこと言われたらすごい照れる。
「春樹さんのほうが!モデルみたいじゃん」
そう、ほんとにモデルみたい。
オシャレな服を着こなしているし、よく見るとスタイルもかなりいい。
「まー行こうか、そろそろ電車くるよ」
「あっ…」
春樹さんが私の手をひょいっと握った。
「どうした?」
そう言いながら春樹さんは、次は指を絡ませて恋人繋ぎになった。
「…バカ」
「ほんとかわいいよ里奈は」
「もーなに!?恥ずかしいよ…!」
電車が着いて、手を繋いだまま乗り込む。
「空いてるねー」
私達の両には数人しかいなくて、みんな寝てた。
「やりたい放題じゃん俺ら」
「どういう意味?」
「聞かなくてもほんとは分かるでしょ」
「春樹さ…きゃっ」
椅子に押し付けるように座らされ、春樹さんがまたがるように乗ってきた。
「里奈…」
春樹さんの顔は、どこか寂しそうに見えた。
「春樹、さん…?どうしたの」
返事はなかった。ううん、キスが返事だったのかもしれない。
そう、春樹さんはキスをしてきた。
長くて優しいキス。

…なんで?

気づいたら唇は離れてて
「ごめんね」
と、なぜだか謝られた。
「別にいいよ」
好きな人にキスをされて嫌なわけがな
い。

電車のドアが開いてアナウンスが流れた。
「着いたね。降りよう」
「あぁうん」
改札を過ぎて、駅前にはお店が並ぶ。
「里奈どこ行きたい?」
「どこでもいいよ」
「じゃあ、歩こうか」
一緒にいれるだけで幸せだと思えるって、きっとこういうこと。
手を繋いで、ゲーセンを見つけたから吸い込まれるように入る。
「プリ撮ろう」
「いいね」
好きな人と2人きりでプリクラ、なんて嬉しすぎる。春樹さんが全部お金を出してくれた。
「こっちおいで」
「う、ん」
肩を抱かれて引き寄せられる。ピースが精一杯で、顔が緊張で引きつる。
パシャ。眩しい。最後のショットのときだった。
「里奈」
「ん?」
振り向いた瞬間、カメラのタイミングと同時にキスをされた。
チュープリ、というやつだ。
「恥ずかしいよっ…!」
「いいじゃん、記念だよ」
そう言って、落書きコーナーに移動する前に再びキスされた。自然と離そうとしたけど、何かが唇を割って侵入してきた。
…今度は大人のキスだった。
「よしよし」
頭をポンポンされ、私は突然の激しいキスに驚いて顔が熱くなった。
「春樹さんは、変態だ」
「何?もっとやれって?」
「違うよぅ!」
高校生は大人の恋愛なんだ。中学生には分からない色々な行為があって…私は春樹さんの欲に応えてあげなくてはいけないようだ。歳の差があると大変なんだなぁと実感する。
落書きコーナーに座ったら、春樹さんが抱きしめてきた。
「春樹さん、ら、落書き…は…」
「せっかく密室状態なんだよー?」
「え?」
「ねぇ、イチャイチャしようよ」
「やっ」
春樹さんってこんな人なの?体目当てみたいでなんだか嫌だよ…。
「春樹さん、いい加減に…して」
「…里奈?」
私は下を向いて、返事をしなかった。
時間が一瞬止まり、春樹さんが口を開いた。
「ごめん」
ただ一言、そう言われた。反省しているようだった。空気が、まずい。
「…うん」
落書きをおえて、ゲーセンを出る。
「里奈、次はどこ行きたい?」
「んー春樹さんの家はダメ?」
「あぁいいよ」
駅に戻ったら、ちょうどいいタイミングで電車が来た。私達の最寄り駅に向かった。
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